昔よく見た上下二段の「バス窓」 実は鉄道が元祖だったってホント!?

昔よく見た上下二段の「バス窓」 実は鉄道が元祖だったってホント!?

 当然ながらバスには車内の客用スペースにも窓が付いている。バスの車体側面にある窓を指す代名詞と言えるものに「バス窓」があるが、このバス窓というのは、どんな形をしていて、どのようなバス車両に取り付けられているのだろうか?

文・写真:中山修一

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元祖はバスじゃなかった!?

 「バス窓」とは上下二段に分かれた窓の一種だ。上と下それぞれの窓ガラスは独立していて、下段だけ開閉ができ、上段はHゴムと呼ばれるパッキンで窓枠とガラスを挟んで押さえた固定窓となっている。上段窓が角丸長方形なのも見た目の特徴だ。

バス窓全盛期に製造されたボンネットバスの1967年式 いすゞBXD50
バス窓全盛期に製造されたボンネットバスの1967年式 いすゞBXD50

 バス窓と言うのだからバスの車体デザインとして盛り込まれたのが元祖かと思いきや、実は最初に始めたのはアメリカの路面電車だと言われている。

 英語でバス窓のことをスタンディーウィンドウと呼ぶ。standyと書きたくなるものの正しいスペルはstandeeだ。

 スタンディーは立ち見客という意味で、立っている乗客が腰をかがめずに走行している場所が確認できるように設けられた窓であることから、転じてスタンディーウィンドウの名が付けられた。明かり取りの役割も兼ねている。

 日本でもバス窓=スタンディーウィンドウが流行した時期があり、鉄道車両、路面電車、バス車両の車体デザインにそれぞれ採用されていた。

 バス車両では1950〜60年代がバス窓のピークだったようだ。1970年代になると窓の形も異なるスタイルへと変わっていった。「バス窓」という言葉が使われるようになったのは、これまたバスではなく鉄道の方が先だ。

 1950年代に作られたディーゼルカーの一部に、窓が上下二段で上が固定窓のスタイルを導入している車種があり、それを見た当時の愛好家がバスの窓を連想してそう呼んだことが、用語としてのバス窓の始まりらしい(諸説あり)。

今もバス窓はあるのか?

 用語としては今も残っているバス窓であるが、バス窓を取り付けたバス車両は現在もあるのだろうか? 保存車を除き、残念ながらバス窓を採用している車両は皆無となっている。

1954年改造の川崎市営トロリーバスの保存車。バス窓が目を引く
1954年改造の川崎市営トロリーバスの保存車。バス窓が目を引く

 現在普通に乗れる路線車や高速車で使われている窓の種類はどうなっているのかと言えば、その一つにサッシ窓がある。

 これも二段窓の一種で、上下2枚のガラスが窓枠にハメ込まれていて、上下両方または下段のみ、ホッチキスのような形をしたレバーを操作して開閉できる。1990年代までに作られたバス車両にはサッシ窓付きが多い。

 他にも、一段で横方向にスライドさせて窓ガラスの開閉が可能な引き違い窓や、上下二段で下が引き違い式・上が固定のT字窓、その逆の下が固定で上が引き違い式になっている逆T字窓を取り付けたバス車両も全国で見られる。

 最近の車種になると、路線車は逆T字窓、高速車や貸切車ではT字窓、という図式がポピュラーなようだ。

 さすがに採用されていたのが50年以上前とかなり古いため、バス窓のバスを見られるのは保存車両が公開されている場所、または全国のどこかに眠っている廃車体くらいだ。

 ただし路面電車であれば今もバス窓車両が活躍している地域もなくはない。元祖は依然現役というわけだ。

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