■筆者が思わず中古で購入してしまった最高傑作とは?
では、E90系335iの3.0L直噴ツインターボと、E36系M3の3.0L自然吸気、どっちが気持ちよかったのか?
難問だが、フェラーリオーナーという立場から見ると、たとえばフェラーリF355を、M3と同じ「自然吸気マルチシリンダーエンジン搭載のMTスポーツカー」というカテゴリーに属するとすれば、当然フェラーリの勝ちとなる。
しかし335iカブリオレは、快適・ラクチンなトルコン6速ATで、フェラーリ的な快楽も楽しめるクルマだった。メタルトップを持つバリオルーフも超快適。ごく自然に普段使いできて、いざという時に屋根を開け放てばフェラーリになるようなもの。335iカブリオレには、フェラーリでもかなわない快楽的な要素があった。よって個人的には、BMWストレート6のベストは、E90系の335iカブリオレだ。
私は2014年、6年6万km走行の335iカブリオレを中古で購入し(263万円)、その快楽を我がものにした。納車当日にATミッションがブチ壊れて入院、足まわりはすでにヘタリが来ていてコーナリングは腰砕け。サウンドも、試乗会で感動したスーパー甘美な響きはなかったが、それでも値段を考えれば十分満足できた。
あのスペシャルなサウンドは、極初期型特有のものだったのか、それともオプションだったのかいまだにわからないが、あの素晴らしい音抜きでも、BMWストレート6のベストエンジンは、E90系に搭載された3.0L直噴ツインターボだったと確信する。
E90系の335i(セダン、ツーリング、クーペ、カブリオレ)のエンジンは、2010年のマイナーチェンジ時、コストダウンのため、それまでのツインターボから「ツインパワーターボ」、つまりシングルタービンのツインスクロールターボに変更された。
最高出力や最大トルクは変更なしで、どっちも「ツイン」と付くのでつい騙されてしまうが、ツインパワーターボ(エンジン形式N55)には、ツインターボ(同N54)のような突き抜け感はなく、低速トルク重視のやや実用的なフィーリングに後退していた。
BMWの3.0L 直6直噴ツインターボエンジン(N54)は、わずか4年余りの命だった。そのはかなさを含め、BMWストレート6の最高傑作として崇めてもいいのではないだろうか。
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