一時はBMWを除いてほぼ絶滅状態であった直列6気筒エンジン。しかし、近年はプレミアムモデルを中心に直列6気筒エンジンが復活しつつある。なぜ再び直列6気筒エンジンが復活しているのだろうか? そこには環境配慮という新たな側面があったのだ。直列6気筒のトレンド最前線を紹介していく。
文:西川昇吾╱写真:ベストカー編集部
■直列6気筒エンジン衰退の理由
まず直列6気筒エンジンは何故一時的になくなってしまったのか? それは衝突安全基準への対応が困難であったためだ。21世紀に入ったあたりから各自動車メーカーのラインナップから直列6気筒エンジンがなくなっていったが、これは1990年代に前面からの衝突性能を重視する流れが生まれたからだ。
エンジン全長の長い直列6気筒エンジンは、衝突エネルギーを吸収するクラッシャブルゾーンを確保するのが難しい。そのため、各自動車メーカーの直列6気筒エンジンは全長の短いV6エンジンへと置き換わっていったのだ。
また、FFモデルが増えたのも大きな理由だ。FFは基本的にエンジンを横置きにするレイアウトだが、エンジン全長の長い直列6気筒エンジンを横置きに配置するのはレイアウト的に難易度が高い。
エンジンを幅広い車種で共有するためにはV6エンジンの方が、自動車メーカー的に都合がいいのだ。
BMWが直列6気筒エンジンをラインナップし続けたのは、メーカーとしてのこだわりもあるかもしれないが、FFレイアウトのモデルをフルラインナップの自動車メーカーとしては最後まで展開しなかったというのも大きいだろう。
■2020年直前から再熱
先に説明した背景からBMW以外直列6気筒エンジン搭載車をラインナップしていない時期がしばらく続いた。しかし、そんな沈黙が2017年にメルセデスベンツによって破られたのだ。
マイナーチェンジを受けたSクラスに直列6気筒エンジンがラインナップされたのだ。このエンジンを搭載したモデルは2018年から日本市場でも販売されていて、フルモデルチェンジされた現行モデルにもラインナップされている。
また2019年にジャガーランドローバーも直列6気筒エンジンを復活させ、マツダは2022年にCX-60に直列6気筒エンジンを搭載した。
FRレイアウトを採用する上級モデルを中心に直列6気筒エンジンが再熱しつつある。この背景には技術の進歩などで、直列6気筒エンジンの全長を短くすることが可能になりクラッシャブルゾーンの確保が以前よりも容易になったこと、そしてボディ側での衝突安全基準対策技術が進んだことなどがある。
■実はエコに向いている直列6気筒エンジン
しかしながら衝突安全基準への対応がしやすくなったからと言って、既存のV6エンジンから直列6気筒エンジンへと転換するのはコスト的にメリットがあるとは言えない。真の理由は別にあるのだ。
エンジンの横幅がV6よりも小さくすむ直列6気筒はダウンサイジングに必要となるターボや、排ガス規制に対応する浄化デバイス、さらにはマイルドハイブリッドを始めとした電動化デバイスなどが配置しやすいのだ。
FRレイアウトが前提となる上級の大型モデルでのエコを考えれば現在は直列6気筒エンジンが最適と考えるメーカーが増えているのだ。
もちろん、直列6気筒エンジンは振動特性に優れていて、スムーズに回転するというのもあるだろう。振動が少ないというのは高級車にとって重要な性能のひとつだ。
どんなに技術が進化しても基本的なレイアウトには敵わない。最新の技術で直列6気筒エンジンを作ればこれまで以上に振動の少ないエンジンを作れるワケだ。
だからこそ上級モデルに直列6気筒エンジンをという気持ちがメーカーにもあったはずだ。
電動化とどのように付き合っていくかが直列6気筒エンジンの今後の展開を左右すると言えるだろう。
電動デバイスとのマッチングを含めて、直列6気筒エンジンがどう進化していくか注目だ。
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