なぜ繰り返される? どう防止する? 飲酒運転をなくすためにできること

なぜ繰り返される? どう防止する? 飲酒運転をなくすためにできること

 クリスマスが終わり、今週の仕事に片がつけば年末年始。今年も一年早かった、帰省だ、でかけよう…と考えている方も多いだろうと思う。ベストカー的に忘れてほしくないのが、お酒とクルマの問題だ。

 思えば今年も、お酒絡みの話題、それもよくない話題が多かったなあ…と思う。

 大きく取り上げられた出来事としては、やはり元アイドルの女性タレントによる飲酒・ひき逃げ事件が大きなインパクトを残した。青森県では9月にクルマ4台が絡む(というよりは3台のクルマが被害を被った、というほうが正しいのだろうが)4人が死亡する事故も起こった。これも飲酒運転だ。

 またちょっと話は脱線するかもしれないが、多くの人の命を危険にさらしたという意味ではその悪質さは変わらないJALの飲酒問題2件も起こっている。

 飲酒運転による死亡事故件数自体は、20年前に比べて約16.4%まで減少している。下の折れ線グラフを見れば激減ぶりがわかるが、平成20年以降の10年間は下げ止まり傾向なのも、また見てとることができる。

「飲酒運転や飲酒運転事故をゼロにはできないのか?」。そんな思いで心理的側面や具体的な動きについて取材を進めた。

平成8年が1296件、平成28年が213件と事故件数は激減。平成19年の厳罰化も減少のポイントになっている

まずは再認識!!飲酒運転には厳しい処分と罰則がある(※は前歴およびその他の累積点数がない場合)

酒気帯び運転
■吸気中アルコール濃度0.15mg/L以上 0.25mg/L未満……基礎点数13点・免許停止期間90日(※)
■吸気中アルコール濃度0.25mg/L以上……基礎点数25点・免許取り消し 欠格期間2年(※)
【罰則】3年以下の懲役または50万円以下の罰金

酒酔い運転
■アルコールの影響により車両の正常な運転ができない状態……基礎点数35点・免許取り消し 欠格期間3年(※)
【罰則】5年以下の懲役または100万円以下の罰金

※本稿は2018年11月のものです
文:ベストカー編集部/写真:Adobe Stock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年12月10日号


■ヒトの心理的側面から飲酒運転をみる

※日本損害保険協会のデータ。「飲酒運転事故率」は原付以上(第1当事者)の全事故件数に占める飲酒運転事故率。色つけされた部分はそれぞれ項目のワースト10を示す

 本企画の根幹、「飲酒運転がなくならない理由」。これには心理的側面に加え、警察などによる対策などが大きくかかわってくる。2人の専門家にQ&A形式で聞いてみた。

■「なぜ飲酒運転はなくならないのか」を、心理的側面から探る

答える人:今成知美さん(NPO法人アスク 代表)

Q:なぜ飲酒運転が起きてしまうのでしょうか?
A:「軽く考えてしまう」からです。いくつかの要素があり、①つい ②近いから大丈夫だ ③距離も近いし、警察の検問はやってないだろう ④私はそれほど酔っていない ⑤代行は来るまで時間がかかりそうだから自分で運転しよう……などです。

Q:体の構造的に酒を飲むとなぜ運転が危険に?
A:アルコールは脳の働き、理性をマヒさせるからですね。“酔う”というのは大脳下部の網様体がマヒした状態をいいます。理性がマヒすると、自分は大丈夫だなどと気が大きくなり、それが油断につながり、非常に危険です。

Q:その心理面に加え、肉体的にも影響がある?
A:はい。お酒を飲むと「認知、判断、操作」が鈍る。それらは運転に必要なものだから、すべて鈍るのは重要問題。例えば目なら、動体視力が落ちて視野も狭くなります。

Q:飲酒運転をさせない対策はありますか?
A:複数でいる場合、まわりの人がとめないとダメ。また会合を開く場合、仕切る人が“仕組み”を作ることが大切です。例えば「事前にクルマで来てはいけないと通達する」など。また、全日本交通安全協会などでは「ハンドルキーパー運動」を推進中で、複数でお酒を飲む場合、飲まない人(ハンドルキーパー)を決め、“私はお酒を飲みません”という目印になるバッジを胸に付ける。飲食店も一体になり取り組むことも重要です。

Q:そんなことをすすんでやるでしょうか? 特に若い世代……
A:逆に若者たちの特徴的な行動が問題視されています。「車内でも飲み会のノリで暴走する」ということ。4〜5人でお酒を飲んだ後、大丈夫だとそのままクルマに乗り、車内が居酒屋の延長線になる。とかく若者は集団になると暴走しがちで、クルマという暴走できる道具があるからうってつけ。その結果、悲惨な死亡事故が後を絶ちません。若者は“集団”でいると気が大きくなるので、集団は要注意事項ですね。

A:“飲酒習慣”が事故を引き起こすことも多い。前の晩に飲んだ酒が残り、朝、飲酒運転状態になっていることです。ビール中瓶1本に約20gのアルコールが含まれており、その約20g、日本酒なら一合、25度の焼酎なら110mlに含まれています。これを「アルコール1単位」といい、この1単位を分解するには、一般的男性で最低4時間、女性で5時間程度が必要とされています(個人差や年齢、体型などで時間は異なる)。

Q:意識しないままに飲酒運転をしていた、と?
A:はい。自分の気づかぬうちに日常、酒気帯び運転をしているというのも多いです。また、日頃それほど飲まない人でも「飲み放題店」へ行くと、「せっかくだから」とかなり飲む場合も。それでも日頃と同じ睡眠時間で日中運転をすると、かなりアルコールが残っており、危険です。

Q:アルコール依存症の人が運転することもありますか?
A:アルコール依存症は“お酒を切らせない”人で、“コントロールを喪失”しています。 いろいろな段階の人がいますが、その依存症の人が事故を起こすケースもあります。例えば、営業職の人で途中のコンビニで酒を買い、駐車場で飲む(医者でこういう人を私は知っています)、会社からクルマで自宅へ帰る場合、家まで待ちきれずに車内で飲む、など。また、トラックドライバーでは仮眠するための「寝酒」で飲むのがクセになっている人も。仮眠ではアルコールは抜けないので大変危険です。

■「なぜ飲酒運転はなくならないのか」。 ドライバー視点で対策や注意点を探る

答える人:国沢光宏さん(自動車ジャーナリスト)

Q:ここ数年、飲酒運転死亡事故件数が下げ止まりしているのはなぜでしょうか?
A:これはもう簡単。殺人事件がなくならないのと同じ。警察も犯罪に対しキッチリ対応している。なのに犯罪は減らない。飲酒運転も普通の人なら「泥酔して運転しよう」とは絶対ならない。ただ飲んだ翌朝、昨晩のお酒が残っているケースは少なくない。これは罪の意識が薄い。注意喚起したいのはこの点です。

Q:飲酒運転が減らないのは取り締まりがゆるいから?
A:現在の飲酒取り締まりの規模で常識ある人達に対する抑制効果は充分に働いていると思う。もっといえば、日本の飲酒運転の取り締まりや罰則は非常に厳しく、飲酒運転者の数はムスリム諸国を除き世界的に見ても少ないと思う。ヨーロッパなど今でも昼ご飯にワインを一杯程度なら飲んでクルマを運転するからね。

国沢氏は飲酒運転の取り締まりはゆるくない、と言うが…

Q:警察の取り締まり、ホントにゆるくないですか?
A:ゆるくないです。私の経験でも、お酒飲む時間帯に低くみても5回ほど検問を受けている。これだけの頻度でチェックされたら、飲酒運転しても大丈夫とはまったく思わないだろう。

Q:冒頭にもありましたけど、翌日お酒が残ることを防ぐ方法はありますか?
A:量と時間がカギ。医療関係者の論文を読むと、平均的な体重の人は350mlのビール1缶飲んだら1時間30分ほどアルコールが残る。6缶飲めば0時に飲み終わっても、翌朝9時まで残っている可能性があるということ。だから、「昨晩飲んで怪しい」と思ったら、息を吹きかけて呼気中のアルコール濃度を調べる「アルコールチェッカー」がいい。以前から私は推奨していますよ。

アルコールチェッカーは最低3000円ほどを。右はタニタHC−310、定価5000円

Q:それ以外に対策として何かいいグッズはないですか?
A:やはりアルコールチェッカーです。それは絶大な効果があり、明確に数値が出るからお酒が残っている状況なら誰でも運転する気にならないだろう。人間、課題を可視化してやれば、キチンと対応できるものです。でも、注意すべきはその性能。感度が怪しいものもあるし、センサーに使用回数制限があるタイプも。最低3000円ほどのチェッカーを買い、使用制限を守ることだね。

Q:最後に飲酒運転に対して、伝えたいことを。
A:私も人並みにアルコールを楽しむ。そのうえで、もし飲酒運転で事故でも起こしたなら、完全に仕事がなくなることを理解してます。私を使ってくれているメディアにも迷惑をかけるため、絶対に飲酒運転などできない。ということで信頼できる精度持つアルコールチェッカーを常備することをオススメ。

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