■3シリーズは哲学を押し通す姿勢に納得する必要がある
先に述べたようにドイツ車は、安全に走ることを重視して開発されるから、ルーズな運転姿勢を受け付けないことが多い。
運転席に深く座り、背もたれを少し立て気味に調節して両脇を引き締めると、運転姿勢がピタリと決まる。逆に背もたれを寝かせてハンドルも適当なところを保持すると、運転しにくくなる。
このドイツ車の特徴を明確に反映させたのがBMWだ。3シリーズでは最適な位置に合わせると快適に座れるが、スイートスポットは狭い。
やや理屈っぽくて万人向けとはいえず、シートの座り心地も含めて拘束感が強い。
インパネやATレバーが収まるセンターコンソールの形状も同様だ。引き締まり感が伴ってスポーティな半面、開放感は乏しい。
シートの座り心地は、硬めでホールド性を重視する。前席は相応に快適だが、後席は座面の柔軟性が乏しく、背もたれを含めて硬すぎる。
しかも着座位置が低めで腰が落ち込み、膝が持ち上がるから、座り心地の硬さが一層強調されてしまう。
走行性能では、操舵に対する反応が機敏だ。ハンドルを少し回しただけで、車両が向きを変える。そこが魅力でもあるが、ユーザーによっては行き過ぎて、神経質な印象を受けるだろう。
乗り心地は硬めだ。操舵に対する反応を機敏にして、スポーティな雰囲気を演出したことも影響した。
318iが搭載する直列3気筒1.5Lガソリンターボエンジンはノイズが大きい。
直列4気筒2Lのクリーンディーゼルターボが静かになったので、1.5Lガソリンターボの方が騒々しく感じるほどだ。3気筒であることも影響している。
緊急自動ブレーキは歩行者も検知するが、自転車や夜間の歩行者への対応は明らかにされていない。
現行BMW3シリーズは、日本国内の発売から6年以上を経過しており、設計の古さも散見されるようになった。本国では新型車がデビューしており、日本への導入も間近だから、これを待つのが得策だ。
■ゴルフはもはやコンパクトと呼ぶには大きすぎる?
VWゴルフはベーシックな輸入車の代表だったが、今はミドルサイズに肥大化した。全長は4265mmに収まるが、全幅は1800mm。
メルセデスベンツCクラス(1810mm)、BMW3シリーズ(1800mm)と同等だ。ゴルフの全幅は、Cクラスや3シリーズとのバランスを考えても1740mm以下に抑えたい。
しかし今ではコンパクトなVWポロの全幅が1750mmに達する。ゴルフ、ポロともワイドになりすぎた。このワイドな全幅は取りまわし性を悪化させ、ゴルフは後方の視界もあまり良くない。
初代モデルからの伝統でボディ後端のピラーが太く、現行型ではサイドウインドーの下端も後ろ側へ少し持ち上げたからだ。
特に斜め後方が見にくいので、今は縦列駐車などが簡単に行えるクルマではなくなった。
居住性は前席は快適だが、後席はあまり広くない。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ分だ。
同じ測り方で、国産同クラス車のインプレッサスポーツ、さらにボディの小さなフィットであれば握りコブシ2つ半が確保される。
ちなみに1975年に日本で発売された初代ゴルフは、全長が3730mm(現行型は4265mm)、全幅は1610mm(1800mm)、全高は1410mm(1480mm)という小さなサイズで、大人4名が窮屈に感じることなく乗車できた。
空間効率の高さを示すのが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の違いだ。現行型は2635mmで、初代ゴルフは2400mmだった。
全長には535mmの差が付くが、ホイールベースは235mmしか違わない。初代ゴルフは、現行型に比べると4輪をボディの四隅に踏ん張らせ、空間効率を向上させていた。
初代ゴルフの時代には、今のような厳しい衝突安全基準がなく、設計の自由度も大きかったが、現行型で贅肉を付けたことも確かだろう。
走りについてはおおむね満足できるが、1.4Lガソリンターボを搭載するTSIハイラインは、走行安定性が少し異なる。
乗り心地が適度に柔軟で車両を内側へ向けやすい代わりに、下り坂のカーブで危険を回避する時などは、後輪の接地性が少し削がれやすい。
前後輪のグリップバランスは、後輪が車軸式になるベーシックな1.2Lガソリンターボ搭載車、あるいは独立式でもスポーティなGTIやゴルフRが優れている。
TSIハイラインは、もう少し後輪の接地性を高めて欲しい。
またゴルフR、あるいはメルセデスベンツのAMGなどに見られる傾向として、妙なアフターファイアも気になる。
走行モードによっても異なるが、エンジン回転を高めて走っている状態でアクセルペダルを戻すと、排気系統で「パパンッ」という燃焼音(あるいは爆発音)が発生する。
要は故意に不完全燃焼を発生させているわけで、エンジン/駆動系/排気系にメリットはひとつもない。単純に「燃焼音がする」というだけだ。
ドイツ車は、良くも悪くも理屈っぽいクルマ造りが特徴だ。このような不完全燃焼など、以前のドイツ車では絶対に考えられなかった。
どこの市場に媚びているのか知らないが、妙なクルマ造りに走ると、今までの伝統が台無しになる。愛車の体調を気遣いながら運転する、クルマ好きのファンも失ってしまう。
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