ターンパイク箱根に導入された「ETCX」、「ETC」との違いって何だ!? どっちが得なのか?

■気軽に導入できる「ETCX」

 代わって登場したのが、ETCXだ。

 「ETCX」は、ETCソリューションズ(株)が提供するサービスで、2021年から運用を開始。今回は、ソニーペイメントサービスや沖電気、オリコ、NEXCO中日本などが出資している。

 採用施設は今のところ全国に6カ所のみだが、利用登録はIBAサービスに比べるとはるかに簡単で、ネット上で5分程度で完了する。ETCXは、クルマ(ETC車載器)ではなくETCカードを登録する形なので、登録したETCカードをほかのクルマに差し替えての利用も可能だ。

 2021年は、静岡県の伊豆中央道と修善寺道路の合計3カ所の料金所(静岡県道路公社)が採用。今年3月には、アネスト岩田ターンパイク箱根にも導入されたので、私も登録し、利用してみた。

■「ETCX」を実際に使ってみた

設置する側もETCより導入のハードルが低いETCX。ターンパイクや伊豆中央道で導入されたETCXを筆者の清水草一氏が利用してみた
設置する側もETCより導入のハードルが低いETCX。ターンパイクや伊豆中央道で導入されたETCXを筆者の清水草一氏が利用してみた

 ETCXは簡易なETC課金システムのため、料金所でいったん停止する必要があるが、それはスマートICも同じ。とまどいはなかったが、最初の利用時は、「本当に作動するのか?」と不安だった。

 ターンパイクの料金所に進入すると、係のおじさんが「730円です」と手を差し出したので、「ETCXです。初めて使うんですが、動いていますか?」と尋ねた。

 おじさんはハッとしたように前(表示部?)を確認し、「オッケーです」と通してくれた。伊豆中央道の江間料金所でも、ほぼ似たような対応だった。決済に要する時間は、3秒程度とのことである。

 まだ、ETCXの利用者が少ないこともあり、窓を開けておじさんと会話する形になったが、なんだか心が温まるし、キャッシュレスで通過できるだけでも充分便利だと感じた。利用の度に確認メールが届くのも安心だ。

■「ETCX」について質問してみた

 それにしても、同じETCを使うのに、なぜ新たに利用登録が必要なのだろう。ETCソリューションズに問い合わせてみた。

 「ETC多目的利用サービス用のETC情報処理装置を利用するのが、ETCXです。新たに、高速道路で使われるETC情報処理装置とは別のシステムを構築しております」

 ETCXは民間が多目的に利用するためのものなので、高速道路利用情報のセキュリティを守るため、ETCとはシステムを厳密に分離している。いったん停止しての利用はスマートICと同じだが、システムそのものが別なので、新たに利用登録を行う必要が生じる。

 利用登録には、「親」のクレジットカードと、「子」のETCカード両方の登録が必要だが、これもETCとはシステムが別のため。車載器に挿入されたETCカードの情報だけでは、決済ができないのだ。

 ただ、登録料や年会費は無料だし、一度登録してしまえばずっと使える。利用者側の負担は、利用登録の手間だけだ。

 つまり、利用が広がるかどうかは、ひとえに利用施設の増加にかかっている。現在のわずか6カ所のままでは事業として成り立たず、いずれIBAサービスのように消滅することも考えられる。

■何に利用できる?「ETCX」の今後

ETCXは通信速度がETCよりも遅く、停止しての利用が前提となる。ドライブスルーのように「一度停止して利用するもの」には最適(suwanb@AdobeStock)
ETCXは通信速度がETCよりも遅く、停止しての利用が前提となる。ドライブスルーのように「一度停止して利用するもの」には最適(suwanb@AdobeStock)

 ETCXは、いったん停止しての利用が前提なので、通信速度はETCより遅く、その分、設置施設側の費用は安上がりになる。

 ETCソリューションは、その利点を生かして、今後「ドライブスルー」や「駐車場」、「ガソリンスタンド」に「フェリー」、「EVスタンド」などへの展開を目指していくというが、実際の設置費用はどれくらいなのか。

 「設置費用は、業態や場所などによって変わってきます。ETCX決済を全自動で行うか、端末によるオペレーションで行うかによっても、かなりの金額差が発生します。詳細につきましては、導入希望の施設と打ち合わせをさせていただき、個別にお見積りさせていただいております。

 参考情報ですが、設置ずみ有料道路では、数百万円で設置した施設もあれば、数千万円の施設もあります。

 ガソリンスタンド、ドライブスルーなどへの展開策としては、必ずしもノンストップに近い処理速度を求められないことを考えると、機器構成の簡略化、廉価版機器による対応など、導入価格を引き下げることと、機器設置工事、保守などを含めたリースプランなども検討しております」(ETCソリューションズ)

 どんなシステムも普及するかしないかは、メリットがあるかないかにかかっている。

 有料道路に関しては、文句なしにメリットがある。交通系ICカードを導入した有料道路(三浦縦貫道、新見沼大橋有料道路、皆野寄居有料道路など)もあるが、タッチする必要があるので、利用者としてはETCXのほうが便利だ。

 駐車場の場合は、施設利用による割引の処理が壁になるだろう。

 それよりも、ドライブスルーが有力ではないか。例えば、マクドナルドは週末ごとにドライブスルーが長蛇の列になり、渋滞すら発生させている。ETCXの導入で支払いがスムーズになれば、社会的にもメリットがあるはずだ。

【画像ギャラリー】ETCのシステムを利用してより身近に手軽に!! 導入へのハードルを下げて普及を目指すETCX(4枚)画像ギャラリー

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