2022年9月、スーパーカーブランド「パガーニ」は新型「ユートピア」をイタリア・ミラノにて世界初公開した。このクルマは、世界限定99台のみの生産となる。
この自動車メーカーは、ランボルギーニ出身の天才デザイナーであるオラチオ・パガーニ氏によって、1992年に設立された。創立30周年の2022年に誕生した「ユートピア」とはどのようなクルマなのだろうか?
本稿の著者である西川淳氏が参加した「パガーニ ユートピア」ワールドプレミアのレポートと合わせて、くわしくお届け。
文/西川 淳、写真/パガーニオートモビリ
【画像ギャラリー】スーパーカーファンの夢の実現!! 世界限定99台「パガーニユートピア」をみる!(31枚)画像ギャラリー■シンプルだけど流麗! パガーニ「ユートピア」とはどのようなクルマ?
テアトロ・リリコ・ジョルジョ・ガベールに到着し、ウェルカムドリンクのシャンパーニュを片手に大勢の着飾ったゴージャスすぎる招待客をやや気後れしながら眺めている間も、これから10年に一度くらいしかないであろうパガーニ新型モデルのワールドプレミアに立ち会うかと思うと、ドキドキが止まらなくなった。
舞台にオラチオ・パガーニが現れると割れんばかりの拍手が鳴り響く。会場の温度がふっと上がった。我らがスターのお出ましなのだ。舞台隅にはグランドピアノがあった。
司会者がその理由を語る。音楽一家に育ったオラチオは正規のレッスンを受けたことがないけれど見よう見まねでピアノを弾くようになった。作曲もこなす。今回は彼が作った曲を彼自身による演奏で新型車の登場を盛り上げるというオシャレすぎる趣向だった。
バックにはオーケストラ。荘厳で美しいメロディーと共に新型モデルのディテールが徐々に明らかになっていく。そしてついに舞台の下からC10(開発コード名)が姿を現した!
喝采とともに大量のスマートフォンが向けられた。車名も発表される。その名もUtopia=ウトピア、そうユートピアだ。姿を現した新たなパガーニ、ウトピアはクリームホワイトに塗られていた。丸みを帯びたシンプルでクラシックなシルエットを持ちつつ、モダンな表情をディテールに散りばめている。
フロントマスクやキャビンとボディの境目からはゾンダの表情も思い出せるし、リアではパガーニの象徴というべき“4つの銃口”がこちらをむいている。なかでも印象的だったのがキャビンデザインだ。美しい弧を描いたそのフォルムはまるで1960年代のレーシングカー風で、なるほどオラチオが好むラインだ。
ドライバーの背後に鎮座するのは、メルセデスAMGが今なおパガーニのためだけに生産する珠玉の12気筒エンジン。賞賛すべきはマニュアルトランスミッションを復活させたこと。速さよりよりドライビングファンを望むVIP たちの声を聞いて、開発途中の3年前に急遽、追加することを決定した。
このあたり、3ペダルミッションを持つクラシックスーパーカーの人気急騰ともリンクする。時代にあえて逆行することもまた、スーパーカーがスーパーな所以かもしれない。そういえばゴードンマーレーの新作にもマニュアルギアボックスがあった。
C10の開発キーワードは「シンプル・ライトウェイト・ドライビングファン」。極めてわかりやすいテーマである。世界でおそらく100名程度に絞られるに違いないVIPカスタマーがその3つを望んでいたとオラチオは説明するが、それは当然だ。ゾンダとウアイラも、あえて言葉にはしないまでも、それらのテーマに沿って開発されてきたのだから。
パワートレーンやボディ&シャシー、エアロダイナミクスデザインなどはウアイラや一連のトラック専用マシン“R”モデルの発展系とみていい。自慢のチタン&カーボン・モノコックボディや軽量サスペンションシステムなどメカニズム構成は完全に新設計ながら従来からのコンセプトをさらに磨き上げた。
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