「これなら手が届くかも」という価格設定で気になる輸入車の“最廉価グレード”。
その車種で最も安い最廉価グレードといえば、日本車ではカタログ燃費に特化した、いわゆる“燃費スペシャル”のグレードであったり、実用上必要な装備も省略した“見せグレード”になっている車種も少なくない。
もちろん、そんな法則が当てはまる輸入車もあるのだが、一方でブランドとしての統一感を重視するため、輸入車は最安グレードでも充実したモデルを用意する傾向があるという。
輸入車最安グレードの傾向と注意点、そしてなかでも買い得感の高い5つのモデルを合わせて紹介したい。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、Daimler、VW
ベストカー 2019年1月10日号
各ブランドの「本質」が見える輸入車の最安グレード
日本メーカーの品揃えは百貨店風だ。例えば、ホンダは軽自動車のN-BOXからスーパーカーのNSXまで幅広く揃える。そのため、メーカーの特徴が表現されにくい。
一方、欧州メーカーは専門店風だ。近年、SUVが加わってから車種は増えたが、日本メーカーほどではない。コンセプトが明快で、各ブランドが統一された表現を行う。
そのために輸入車は、低価格の車種やグレードほど面白い。「これだけは譲れない」という各ブランドの主張や本質が明らかになるからだ。
また、海外メーカーは日本車より車種数は限られるが、1車種に幅広いエンジンを用意する。
例えばメルセデスベンツ CクラスにはAMGのC63Sがあり、4L・V8ツインターボで最高出力は510psに達する。C180は基本的に同じボディで、エンジンは1.6L直4ターボになり、最高出力は156psだ。
従ってC180では、動力性能に対してシャシーに充分な余裕がある。このような高品質感を得られる点も輸入車の最廉価グレードの魅力だ。
プレミアムブランドでは、シンプルな装備が生み出すカジュアルな雰囲気も注目される。前述のC180は、シート生地がファブリックで、ステアリングのチルト&テレスコピックは手動調節だ。メルセデスベンツのセダンを日常生活のツールとして使いこなす感覚を楽しめる。
輸入車最安グレード選びの注意点は?
ただし、注意点もある。最廉価グレードには「価格が高い」というイメージを払拭するためや、レンタカーやカーシェアリングのために設定された仕様も多いからだ。
例えばBMW318i SEは、緊急自動ブレーキを装着できない。電動調節機能を手動にしたり、ホイールをアルミではなくスチール製にするのは問題ないが、安全装備を省かれては困る。少なくとも重要な装備は、オプション装着を可能にすべきだ。
そして最廉価グレードに安全装備をオプション装着すると、これらを予め標準装着した中級グレードと、価格が同等になる場合がある。このような最廉価グレードは、割高だからお薦めできない。
つまり、買い得な最廉価グレードの条件は、安全装備が中級や上級グレードと同様に充実していることだ。快適装備などは、必要に応じてオプション装着できると好ましい。ボルボなどは安全装備が基本的に全グレード標準装着で最廉価グレードも買い得だ。
そこで輸入車を買う時は、必要な装備をセットした最廉価グレードと、これらを標準装着した中〜上級グレードを比べて検討するといい。
ただし、最廉価グレードに必要な装備を加えると、新たにメーカーへ発注することになり、納期が長引いたり値引きが減る場合がある。数年後の売却額も不利になりやすい。
これらの損得勘定まで含めると、在庫車から充実装備の売れ筋グレードを選び、相応の値引きで買うことになる。最廉価グレードには独特の魅力が備わるが、現実的にはマニアックな選択ともいえる。
コメント
コメントの使い方