2代目の奇抜なデザインが功を奏した、シエンタ
一方のシエンタは、初代モデルは2003年に登場。デザインは丸型ヘッドライトで優しい表情、プレーンなパネル構成というシンプルなデザインで、モビリオに比べると個性は薄い印象だった。2011年のマイナーチェンジ時にはアグレッシブなヘッドライトとエアロパーツが装着された「DICE」も追加されたが、その頃にはフリードが登場していたため、それほどのインパクトはなかった。
ところが、2代目シエンタでは、「トレッキングシューズ」をイメージしたというスポーティで躍動感のあるデザインや、「エアーイエロー」など鮮烈なボディカラーにブルーメタリックのアクセントを入れた個性的なコーディネート、「一筆書き」をモチーフにしたグラフィック効果など、非常にインパクトのあるエクステリアに。これによって、単に多人数乗車を求める層だけでなく、アウトドアレジャーを好む独身の若者や、スライドドアでコンパクトなモデルが欲しいシニア世代などからも支持されるようになった。
その後、2022年8月に3代目となる現行シエンタが登場。2代目のテイストを上手く残しながら、おしゃれなフランス車のようなテイストも取り込んだ。ボディサイドの大きなサイドプロテクションモールや縦型のリアコンビネーションランプ、ベルトラインを水平にした大きなキャビンスペースなど、機能と個性が上手に両立しているデザインだ。
次期フリードに求められるのは、低いフロア地上高と個性あるデザイン、そして「お得感」
では、新型シエンタの好調からみえる、次期型フリードに必要なことを考えてみよう。シエンタで好評の装備(仕様)のひとつが、「330mmの極めて低いフロア地上高」(先代モデルから継承)だ。現行型フリードも390mmと、こちらも決して高くはない(一般的なミニバンレベルと同等)のだが、この60mmの差は、高齢者や小さな子供にとっては意外と大きな差。せっかく5ナンバーサイズのミニバンなのだから、このあたりはシエンタと同レベルにまで持っていきたいところだ。
つぎに考えられるのは、やはりデザインだろう。現行型フリードはスタイリッシュではあるものの、シエンタのような個性は感じられない。もちろんあまりにも個性的だと好き嫌いが分かれてしまうし、ユーザーの選択肢を狭めてしまうことにもなりかねないのだが、無難すぎても全く所有欲が満たされない。このあたり新型シエンタは非常にバランスが良いと思う。
ホンダでいえば、現行型フィットのデザインに不満の声が多く挙がっている。カッコいい系から、目がぱっちりとしたカワイイ系へと変更したことが裏目に出たとされているが、現行フリードは、どちらかというとカッコいい系であり、フィットの流れを汲むと、カワイイ系へ変更となる可能性が高い。次期型フリードは、このあたりしっかりユーザーの声を聞きながら、デザインを仕上げて欲しいと思う。
そしてもうひとつは、「高い質感を実現することによるお得感」だ。これはデザインとも関係があることなのだが、コンパクトSUVのヴェゼルがモデルチェンジした際、前評判では「ダサい」と不評だったものの、フタを開けてみると「実車を見るとカッコいい」と概ね好評であった。これは、車格以上に感じられた内外装の質感の高さも手伝っているのだと思うが、細かな造りの良さが「お得感」を生み出すため、このクラスのミニバンには特に求められる要素なのだと思う。
現行フリードのインテリアも、車両価格の割には質感が高いと評判であるため、この辺りは現行フリードを超える質感を目指すのが王道だろう。次期型フリードでは、こうした要素を妥協せずに織り込み、絶対的な価格ではトヨタに敵わないとしても、いかに「お得感」や「プラスアルファの価値」を出していけるかが、勝負どころになるのではないだろうか。
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コンパクトミニバンの市場自体はかなり熟成されたものであるため、「画期的な装備」やあっと驚くようなメカニズムでもなければ、基本的な市場規模に大きな変化はないだろう。次期フリードがしっかり造りこんで、さらに魅力の高いモデルをリリースし、シエンタと販売合戦を繰り広げてくれることを期待したい。
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