断水と災害廃棄物
災害の時は、通常の物流のほかに、生活用水の供給、災害ゴミの運搬(静脈物流)という、平時には発生しない物流が必要になる。前者は水道局などの給水車が、後者は自家用の軽トラックなどで行なうことが多い。
水害の場合は家財の洗浄などで大量の水が必要になる。しかし、自治体の給水車には長蛇の列。給水車にはぜひ分岐水栓を付け、5〜10人くらいが同時に給水できるようにしていただきたい。
また、水質にこだわるため水不足が起きる。飲料用と生活用水をハッキリと分け、生活用水は大量に供給すべきだ。生活用水は、地区ごとに農業用ローリータンク(500L程度)を設置し、そこから自由に汲めるようにすれば供給は円滑になる。
そこへの補充は2トン車に、より大きい農業用タンクを積んで巡回する。また、IBCコンテナ(1kL液体パレット)も活用できる。
災害廃棄物の運搬は、通常の廃棄物とは比べ物にならない量が一時に出るため、仮置き場がパンクし、捨てに行くにも渋滞ができる場合があり、貴重な復旧作業の時間を無駄にすることになる。自治体担当者におかれては、同時並行して多数の集積場所を用意するなど、柔軟な対応を取ってほしい。
水害地域で家財の搬出や泥の掻き出しを経験したことのある人ならわかると思うが、周りじゅう泥だらけで、体の休まる場所はクルマの中ぐらいしかない。晴れた日になれば砂埃が舞い上がる。
復旧活動にとって、トイレ、シャワー、風呂、洗面所、洗濯機等は必需品だ。数キロ離れた民宿等に活動ベースを置ける場合はいいが、地域内に留まる場合は非常に困る。
自治体は、初動対応で仮設トイレを手配するだろう。しかし、風呂、シャワーとなると自衛隊クラスの装備が必要になる。
水道の出るホテル、施設等が住民に無料開放する場合もある。東日本大震災の時は、石巻市河北地区では道の駅「上品(じょうぼん)の郷」の入浴施設が、近隣ではほぼ唯一稼働しており、たいへん助かったのを思い出す。
トイレや入浴施設、コインランドリーを架装した特殊車両もあるが、まだ数が少ない。ただし、特殊装備を架装してしまうと車両の稼働率は非常に悪くなってしまう。
車両に固定せずに、架装物をアームロール脱着方式のコンテナ化し、平常時は積み重ねて備蓄しておけばよいと思う。ハウスメーカーやプレハブメーカーには、コンテナ型トイレ、コンテナ型シャワーの開発をぜひお願いしたい。
救援物資のロジスティクス
東日本大震災のような巨大災害においては、県の救援物資集積地には物資があふれ、外には降ろし待ちのトラックが待機、だが被災地には物資が届かないという状況が発生した。スーパー、コンビニ等もほとんど営業していなかったため、被災地は物資不足に陥った。
また、住家の備蓄を分け合って食いつないだという話も聞いた。見本展示会場等の県集積所には、後に日本通運などの物流企業がオペレーションに入り、動線確保や物品の入出庫管理をすることにより正常に動き出した。
また、各地区や避難所のニーズ取りまとめが非常に重要で、物流を動かす情報の元となる。避難所内での物品の分配も大仕事だ。避難所では、住民の「アレが欲しい。コレが欲しい」というニーズにいちいち自治体職員が応対したのでは、労力を取られてしまう。
平時にはスーパーのレジに住民が並んでしていた膨大な作業だ。これは流通の領域である。だから自治体が、災害によって壊れてしまった「メーカー〜物流〜流通」という一連の仕事をゼロから立ち上げようとしても、相当な労力が要るし、上手くいかない。
そのためにも、先に挙げた移動販売車(あるいはコンテナ型店舗)の派遣は非常に重要である。
また、情報が得られないときに個人でクルマに物資を満載してニーズを聞かずに被災地に向かう「プッシュ型」の供給は、かえって支援の邪魔になるのかといえば、あながちそうではないと思う。情報のない中、ピンポイントで末端に届けることは、充分に助けになる。普段からの付き合い、情報収集が重要だろう。
これからも日本は風雨災害、地震・津波災害などは発生するだろう。今回挙げた支援物資などは自治体が発災後ただちにすべて用意・調達できるものではない。不足分を国がすぐに届けられる体制をつくるべきではないか。
家屋の全壊、半壊等に対しても、国や自治体から一部補助は出るものの、基本的には自力復旧であり、ボランティア頼みである。
災害は自然が相手だから、減災はできても、起こること自体は避けられない。災害が起こるたびに国民が心を痛めるのではなく、もう少し安心して復興を見守れる国になってほしいと思う。
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