2月2日、ホンダが今後の水素事業について発表を行った。来年、CR-Vベースの燃料電池車を投入するという内容にも驚いたが、商用車や建機、定置電源向けの燃料電池を外販するというアナウンスにはもっとびっくりした。いったいホンダは何を考えているのか。燃料電池の未来を予想してみた!
文/ベストカーWeb編集部、写真/ホンダ、いすゞ
■CR-Vベースの燃料電池車は500万円台!?
ホンダの燃料電池事業といえば、思い出されるのは燃料電池車「クラリティ フューエルセル(FC)」。販売が奮わず2021年に生産を終了したが、その当時からホンダは「燃料電池の研究は継続する」と明言していた。
その甲斐あってか、今回ホンダは「耐久性で2倍、コストが3分の1」という次世代燃料電池の生産にメドを付けたようだ。その背景には、ホンダと同様燃料電池に力を注ぐGMとの協業があったわけだが、ともかく2024年、ホンダは北米で販売している6代目CR-Vをベースに、新たな燃料電池車を日とアメリカで販売する。生産を担うのは北米オハイオ州にあるPMC(パフォーマンス・マニュファクチャリング・センター)だ。
ここで注目されるのが価格。パワーユニットを3分の1までコストカットし、既存車種を流用するという戦略をとるなら、次の燃料電池車はBEV並みの価格を実現してくるはず。クラリティFCが783万円だったことを考えると、500万円台に突入する可能性が高いとみていいだろう。
とはいえ、燃料電池車は価格だけでは普及しない。水素の製造コストが下がり、充填設備が普及することも必要だ。そこでホンダは、燃料電池の外販に打って出る。社会のあちこちで燃料電池を使ってもらい、水素インフラをコモディティ化することを狙っているのだ。
■いすゞやコマツなど多くのパートナーと組む!?
ターゲットに選んだのが、冒頭にも述べた「商用車」「建機」「定置電源」という領域。
まず商用車だが、日本ではいすゞ、中国では東風汽車と組んで、燃料電池システムを積んだトラックの公道実験をスタートする(中国では開始済み)。ただしここでは不安もある。いすゞの立ち位置だ。同社はトヨタや日野が立ち上げたCJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)という次世代商用車のためのコンソーシアムに参加しており、こちらでも燃料電池トラック(燃料電池はトヨタベース)を開発中なのだ。ホンダといすゞの協業はCJPT設立以前から始まっているとはいえ、CJPTの開発と並走させるのは非効率。ひょっとしたら新たな提携先が出現したりするかもしれない。
次は建機。もともとCO2排出量が多く脱炭素化が急がれる領域だが、欧州では建機が全電動化される日も近いとされ、各社が電動建機の開発を急いでいる。日本でも日立建機やコベルコ建機などの動きが活発だが、ホンダが組む可能性が高いのは、コマツではないだろうか。
コマツは2021年、マイクロショベルの電動化やバッテリー共用システムの体制構築でホンダと契約を締結しており、実際にホンダの交換式バッテリー「モバイルパワーパック」を使用する超小型ショベルカーも発表している。この関係が発展し、燃料電池建機に至るのは自然な流れのように思えるのだ。
コマツはすでに自前の燃料電池の試作に取り組んでいるが、パワーユニットが外注できれば開発期間やコストの削減効果は大きい。ライバルに先駆けるためにもホンダと組む戦略はあり得ると考える。
最後は定置電源だ。近年はデータセンターや太陽光発電施設などに蓄電池を併設し、非常用電源や電力の調整役として使うケースが増えている。多くはリチウムイオン電池だが、ホンダは万一の災害時にも48時間以上連続稼働ができる燃料電池のポテンシャルに目を付けて、普及を図ろうとしている。
ちなみに定置型の燃料電池には、リン酸型や溶融炭酸塩型、個体酸化物型などの種類があるが、これらはどれも家屋並みの設備が必要で、作動温度も高温になるものが多い。対してホンダはクラリティFCにも搭載した固体高分子型燃料電池をモジュール化し、必要なだけ組み合わせて使える扱いやすさと柔軟さを武器とするようだ。
水素を使うだけの自動車メーカーから、水素インフラを普及させるサプライヤーへと舵を切ったホンダ。バッテリーEVもいいけれど、燃料電池の分野でも世界をアッと言わせてほしい!
【画像ギャラリー】水素はオワコンじゃない! まだまだ伸びるホンダの水素戦略(11枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方