世界各国のトラックをメーカーごとに紹介する「世界のトラック」。今回はイタリアの「イヴェコ」をピックアップ。同社の設立経緯や最新ラインナップを多賀まりお氏が解説する! なお同社は2018年に日本市場参入を発表。同年のトラックショーに販売予定の天然ガス車を出品し話題を集めたが、その後、同計画に関する続報は届いていない。
文/多賀まりお
写真/イヴェコ
※2020年3月10日発売「フルロード」第36号より
フィアットやランチアなど5社の合弁で誕生
1975年にフィアット、ランチア、OM、ユニック、マギルスドイツの5社の合弁によって設立されたイタリアのイヴェコ。現在はCNHインダストリアル傘下でトリノに本拠を置く商用車メーカーだ。
2019年7月に従来の「ストラリス ハイ・ウェイ」に代わる長距離輸送用大型トラック「Sウェイ」を発表。フラッグシップのフルモデルチェンジは2002年のストラリス発表以来17年ぶりとなる。さらに21年4月には本格オフロードモデル「Tウェイ」を発表し、新世代の大型トラックシリーズがついに出揃った。
イヴェコ車に搭載されるカーサ/テクターシリーズエンジンはグループ企業であるフィアット・パワートレーン社が供給する。同社は高過給高出力エンジンを得意とし、天然ガス仕様についてもディーゼルより高い燃焼〜排出ガス温度に耐えるスチール製タービンハウジングなどを導入してクラストップの高出力を実現した。
イヴェコは欧州メーカーの中でもとりわけCNG(圧縮天然ガス)やLNG(液化天然ガス)などの代替燃料に積極的で、大型のLNG/CNGのほか、中型のユーロカーゴ、小型のデイリーにもCNG仕様を設定している。なかでもデイリーのブルーモーションはZF製8段ATを搭載して優れた動力性能を発揮する。
●Sウェイ
従来のストラリス ハイ・ウェイの後継モデルとして2019年7月に発表された長距離輸送用のフラッグシップモデル。内外装デザインが一新されたキャブは、2.5m幅のハイルーフと標準ルーフのほか、2.3m幅の低床フロア仕様もラインナップ。エンジンはFPT製カーサシリーズで8.7/11.1/12.8Lのディーゼルと8.7/12.8Lの天然ガス仕様。
●Tウェイ
従来のライト特装モデル「ストラリスXウェイ」と本格オフロードモデル「トラッカー」の後継モデルとして21年4月に登場した。キャブはSウェイの2.3m幅と共用。さまざまな駆動方式の単車系モデルとともに2軸と3軸のトラクタ系モデルもラインナップしており、エンジンは8.7/12.8Lがメイン。トランスミッションは12/16段AMTを組み合わせる。
●ユーロカーゴ
GVW7.5〜18t級の中型汎用モデル。キャブは2.1m幅で、ロールーフのデイキャブやハイルーフのスリーパーキャブなどを設定。4人乗りのクルーキャブもある。エンジンは4.5/6.7Lのテクター2機種で、トランスミッションは6/12段AMT、6/9段MTを設定。短尺の四輪駆動モデルも存在する。
●デイリー
GVW3.5〜7.5t級の小型商用車。全車型でラダーフレーム構造を採用し、バン車型のほか、荷台架装用のキャブ付きシャシーモデルもラインナップ。エンジンは2.3/3.0Lディーゼルが設定されており、3.0LのCNGエンジンを搭載する「ブルーパワー」仕様もラインナップする。