ハイブリッドで「元を取る」は無謀なのか? 究極の損得勘定をせよ 

ハイブリッドで「元を取る」は無謀なのか? 究極の損得勘定をせよ 

ハイブリッド車で元を取るには、と考えたことはあるだろうか? もちろん燃費以外にも加速感や静粛性など、ハイブリッドのメリットは多くある。

しかしハイブリッドの購入動機では燃費が占める割合も多くあるはず。そこでハイブリッド車はどれだけ乗れば「元が取れるのか」を検証してみた。

細かすぎる話ですが、燃費で元を取るのが厳しいかもしれません。

文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部


■ハイブリッドカーの損得勘定をする手引き

エコは損得勘定では語れない。ハイブリッドで燃料消費量を抑える目的は、化石燃料の使用と二酸化炭素の排出を減らすためだ。

走行距離が伸びて、トクをするからハイブリッドを選ぶという話ではない。環境性能を向上させるのが本来の目的だ。

しかし個人のユーザーがクルマを買うとなれば、損得勘定を軽視できない。クルマを購入して維持するには、家計をやり繰りして、費用を捻出することになるからだ。

エコは損得勘定では語れないことを前提にした上で、金銭的な計算も行ってみたい。

プリウスのようなハイブリッド専用車もあるが、大半の車種は、電動機能を持たないノーマルエンジン車とハイブリッドの両方を用意する。

ノート、セレナ、シエンタ、ヴォクシー、フリードなど、販売ランキングの上位には、ハイブリッドを選べる車種が並ぶ。購入時に、ノーマルエンジンか、ハイブリッドかで迷うのは当然だ。

ハイブリッドを選ぶ要素は燃費だけではないが、それでも多くの消費者にとっては燃費で回収できるかは大事な要素になるはずだ

この時に知りたいのが「ハイブリッドの価格上昇分を燃料代の差額で取り戻すには、どの程度の距離を走れば良いのか」だろう。

自分の使い方を考えて、価格上昇分を取り戻せればハイブリッドが買い得、無理ならノーマルエンジンになる。損得勘定の算出方法は以下の通りだ。

(1)まずノーマルエンジンとハイブリッドの価格差を割り出す

大半の車種では、ノーマルエンジンとハイブリッドを似通ったグレード名で設定している。

違っていても、装備がほぼ共通のノーマルエンジンとハイブリッドを見つけられる。「ハイブリッドの価格-ノーマルエンジンの価格=両車の価格差」になる。

(2)価格差から購入時に納める税金の差額を差し引く

エコカー減税が施行されている場合、ハイブリッドは減税率が大きい。免税(100%の減税)になる車種も多い。

そこでノーマルエンジンとの税額差を計算して、(1)で算出したハイブリッドとノーマルエンジンの価格差から差し引く。

そうなると両車の価格差が縮まり、最終的な差額が分かる。

(3)ハイブリッドとノーマルエンジンの実用燃費を計算する

ハイブリッドの価格上昇分を燃料代の差額で取り戻せる距離を知るには、両車の実用燃費(1km当たりの走行コスト)を計算する。

WLTCモード燃費か、JC08モード燃費の85%(JC08モード燃費×0.85)が実用燃費と考えれば良い。

そして石油情報センターのホームページで、レギュラーガソリンや軽油の単価を調べる(週次調査が分かりやすい)。

プレミアムガソリン価格は、1L当たりレギュラーの10円増しくらいだ。仮にハイブリッド車のJC08モード燃費が30km/Lだとすれば、85%の25.5km/Lが実用燃費になる。

レギュラーガソリン価格が150円であれば、150円÷25.5km/L=5.9円が1km当たりの走行単価だ。

ノーマルエンジン車のJC08モード燃費が20km/Lなら、同様に計算して8.8円が1km当たりの走行単価になる。

上記の例では、ハイブリッドを選ぶと燃料代を1km当たり2.9円節約できる。

(4)ハイブリッドとの価格差を何kmで取り戻せるか計算

ハイブリッドとノーマルエンジンの価格差が45万円、エコカー減税に基づく納税額の差額が10万円とすれば、実質差額は35万円だ。

一方、ハイブリッドが1km当たり燃料代を2.9円節約できるとすれば、35万円÷2.9円=12.1万kmを走ると、燃料代の差額でハイブリッドとノーマルエンジンの価格差を取り戻せる。

上記の計算に基づくと、ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差を短い距離で取り戻しやすいのは、以下の特徴を備えた車種になる。

・ハイブリッドの燃費数値がノーマルエンジンに比べて大幅に優れている
・ノーマルエンジンとハイブリッドの価格差が小さい
・ノーマルエンジンとハイブリッドの減税額に大きな差がある

逆にハイブリッドとノーマルエンジンの燃費数値の差が小さかったり、ハイブリッドの価格が大幅に高い、あるいは減税額の差が付きにくい車種は、ハイブリッドの価格差を燃料代の節約で取り戻せる距離も長くなる。

大雑把な話をすると、1年間の走行距離が1.5万km以上のユーザーは、ハイブリッドによる燃費の節約効果が高まる。1万km以下ではメリットを得にくい。

具体的には以下のような計算が成り立つ。

*レギュラーガソリン価格は150円/L、プレミアムガソリンは160円/Lで計算。
*実用燃費はJC08モード燃費の85%、あるいはWLTCモード燃費。
*エコカー減税は2018年度の数値(2019年4/5月に変更を受ける)

次ページは : ■燃料代の差額で価格差を取り戻しやすい車種

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