■オラオラ顔のモデルは箱型車の弱点を補うための手段だった!?
改めて国産車のデザインを俯瞰して見ると、オラオラ顔のモデルは、それほど多いわけでも、売れまくっているわけでもない。
ぶっちゃけ、ミニバンや軽ハイトワゴンなどの箱型車だけなのだから。軽では相変わらず主流派だが、昨年、登録車の販売トップ10に入ったオラオラ顔は、4位のルーミーと10位のアルファードだけだ。
ミニバンや軽ハイトワゴンは、箱型であるがゆえに、速そうなデザインにすることは不可能。かつては「走る冷蔵庫」とやゆされ、スポーティなクルマに馬鹿にされていたが、その弱点を補う手段として、オラオラ顔が生まれた。
箱型車くらいの「顔面積」がないと、オラオラ顔と言えるほどのオラオラ感を出すことは難しい。それは、セダンやスポーツカーにはできない芸当で、「走る冷蔵庫の逆襲」だったのである。
オラオラ顔によって威圧感を得たミニバンや軽ハイトワゴンなどの箱型車は、室内の広さと相まって、一時は国内販売の半分近くを占めた。
■ミニバンの販売が全体的に厳しい理由とはなにか?
しかし最近は、軽ハイトワゴンはともかく、ミニバンの売れ行きは退潮気味だ。アルファードは新たな高級車の形として快進撃を続けているが、ノア/ヴォク、セレナ、ステップワゴンのミニバン御三家は、かつてほどは売れていない。
その背景には、少子高齢化がある。ミニバンは子育てファミリーに最適だが、その層の絶対数が減少し、高齢化の進行によって、大容量ボディは需要が減少した。つまり、オラオラ顔が退潮しているというよりも、ミニバンがやや退潮気味なのである。
ミニバンの中でも、コンパクト系は好調を維持しているが、フリードとシエンタは非オラオラ顔、ルーミー三兄弟とソリオはオラオラ顔に分化している。ルーミー三兄弟/ソリオはサイズ的に軽に近いがゆえに、「ナメられたら終わり」という心理が強く働いていると推察される。
総合的に見て、やや退潮気味のオラオラ顔だが、今後はどうなるのか? それは、新型アルファード/ヴェルファイアのデザインにかかっていると断言できる。
■期待される新型アルファード・ヴェルファイアのデザインはどうなる?
アル/ヴェルは、オラオラ顔の頂点に君臨するミニバン界の絶対王者。今やセンチュリーやレクサスLS、クラウン等の伝統的高級車にかわって、日本を代表する高級車になったと言っても過言ではない。
現行モデルではアルファードが圧倒的な人気だが、先代はヴェルファイアがややリードしていた。次期型でも兄弟として存続し、デザインテイストの違いで、より多くの顧客を得る戦略に出る。
新型アル/ヴェルが、現行アルファードのオラオラ顔を超えるオラオラ顔で登場し、さらなる人気を得れば、それに引っ張られて、オラオラ顔ブームが再加速し、「もっともっとオラオラを!」となる可能性がある。
いっぽうで、アル/ヴェルがおとなしめの顔で登場すれば、オラオラ顔の限界点がはっきりして、オラオラファンも、「そろそろ落ち着いたオラオラがいいね」という空気になっていくのではないだろうか。
正直なところ、日本人の多くは、オラオラ顔の刺激に麻痺気味で、現在は、シンプル系やスポーツカー系が新鮮に感じられている。プリウス人気がそれを裏付けている。
新型アル/ヴェルは、果たしてその流れを断ち切れるか? そこに、今後のオラオラ顔の命運がかかっている。
コメント
コメントの使い方