急速な技術進化のおかげで、身の回りのモノがまるでスマホのようにあらゆるシステムと繋がる時代に入ったが、クルマという乗り物もそんなスマホ化の波が迫りつつある。この流れをどう見るか、ジャーナリスト3人に意見を伺おう!
※本稿は2023年2月のものです
文/鈴木直也、佐藤耕一、斎藤聡、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部、ソニー・ホンダモビリティ
初出:『ベストカー』2023年3月10日号
■鈴木直也氏の考察
1月にソニー・ホンダモビリティが発表したアフィーラ(AFEELA)でもそうだったけど、新しいEVの発表では「これからのクルマはスマホになる!」的なイメージが語られることが多い。
でも、皆さんも疑問に思いません?「それって、スマホを持って普通のクルマに乗るのとどう違うの?」って。
たとえば、「近所の美味しいラーメン屋さん教えて」とスマホに聞くことはもう普通。その機能がクルマと融合したとして、ラーメン屋までのルートがナビに自動表示されるレベルじゃ新鮮味はゼロ。
クルマと融合することで初めて実現する新しい機能がないと、「スマホ化したクルマ」とかとても言えないと思う。
いまのところ、どのメーカーも「これぞキラーコンテンツ」と考えているのが自動運転だけど、コイツは技術的なハードルがメチャ高い。
テスラがFSDの価格を1万5000ドルに値上げして話題になっているけど、レベル2+のADASをこの価格でつけられるのは、一種の脱法行為で「なんちゃって自動運転」を提供しているから。
社会的責任を考えると、普通の自動車メーカーが同じことをしようとしても、それはとてもじゃないけど無理でしょう。
ぶっちゃけ、メーカー側が望む「スマホ化」の本質は、コストのかさむ新しいクルマのIT機能を月額××円のサブスクで提供する仕組み。これじゃあ、ユーザー側から見たらあんまり幸せとは言えないんじゃないかなぁ。
■佐藤耕一氏の考察
「クルマのスマホ化は人を幸せにするのか?」これはYESと言える。クルマのスマホ化によって、まず実装されるのがオンラインアップデートであり、オーナーにとってもメーカーにとってもメリットが大きいからだ。
オンラインアップデートによって、クルマの機能は進化し、バグの修正も実施される。
テスラはすでにこれを実施しており、アップデートのたびに愛車の魅力がリフレッシュされ、ますますクルマが好きになるのだそうだ。2025年前後にはテスラ以外のメーカーも同様の仕組みをリリースする見込みだ。
そして気になるのは、アプリによってスマホが便利で楽しくなったように、クルマもそうなるのかどうか。
これは、メーカーが開発を進めている車載OSとクラウドのシステム(=プラットフォーム)の出来次第だ。各メーカーの車載OSが出揃ってしばらくすると、出来のいいプラットフォームにアプリが集中するようになり、スマホがそうであったように、それ以外のプラットフォームは選ばれなくなるだろう。
さらにハードウェアとしてのクルマも、アプリが充実したプラットフォームに集約されていくようになる。5~10年後から、その流れに徐々に巻き込まれていくものと予想する。
懸念点としてはコストの増加だ。スマホ化には膨大なコストがかかるので、クルマのスマホ化はまずEVやPHEVの高級車から始まり、大衆車には必要性の高い機能から徐々に広がっていくことになるだろう。
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