ハイブリッドと電気自動車の長所を併せ持つのがPHEV(プラグインハイブリッド)だ。トヨタはプリウスとRAV4、ハリアーにPHEVグレードを設定している。大型バッテリー搭載のため高額な価格設定となるが、果たしてコストパフォーマンスはベースモデルと比べてどの程度なのか?
文/渡辺陽一郎、写真/トヨタ、ベストカー編集部
■EVに近い使い方ができるPHEV
日本国内における乗用車の電動比率は、マイルドハイブリッドも含めると約50%に達する。主力になるハイブリッドの中で、特に機能の幅を広げたタイプがPHEV(プラグインハイブリッド/充電の可能なハイブリッド)だ。
PHEVは、1回の充電で、WLTCモードによると70~100km程度を走行できる。短距離の移動であれば、エンジンを始動させる必要はない。日常的には電気自動車として使い、遠方までの外出では、ハイブリッドとして機能する。
PHEVは、日本メーカーでは三菱やマツダも用意するが、最もラインナップが豊富なのはトヨタだ。プリウス、RAV4、ハリアーにPHEVを設定した。
そこでPHEVの損得勘定を考えたい。PHEVは充電機能を備えるから、ハイブリッドよりも価格が高いが、経済産業省などから補助金の交付を受けられる場合もある。上記のトヨタ3車の経済産業省による交付額は、2023年4月以降も55万円とされ、補助金を含めか否かで損得勘定が大きく変わる。
■補助金でお買い得になるプリウスPHEV
まず新型プリウスだが、PHEVは最上級のZのみに設定される。エンジンは2Lだ。ベーシックなハイブリッドZも2Lエンジンを搭載するが、駆動用電池の性能も異なり、モーターの動力性能はPHEVが上まわる。
エンジンとモーターの動力性能を合わせたシステム最高出力は、ノーマルタイプの2Lハイブリッドが196馬力、PHEVは223馬力だ。
運転感覚もPHEVはパワフルだ。動力性能は2Lのハイブリッドでも十分だが、PHEVはさらにスポーティな印象になる。停車状態から時速100kmまでのフル加速タイムは、2Lのハイブリッドが7.5秒でPHEVは6.7秒だ。
スポーツカーのGR86は、最高出力が235馬力の2.4Lエンジンを搭載して6.3秒だから、PHEVはそれに迫る加速性能を発揮する。
またエンジンを停止させてモーターだけで走っても、時速80km前後まではパワー不足を感じない。駆動用電池や充電機能の搭載により、車両重量は1570kgに達するが、エンジンの力を使わずモーターだけで滑らかに走行できる。
PHEVが1回の充電で走行可能な距離は87kmとされ、プラグインハイブリッドとしては不満のない性能だ。日常的な移動であれば、先に述べた余裕のある動力性能と相まって、エンジンを始動させず電気自動車として走行できる。
プリウス PHEV Zの価格は460万円で、ハイブリッドZの370万円に比べると90万円高い。ただしPHEV・Zには、ハイビーム状態を保ちながら対向車などの眩惑を抑えるアダプティブハイビーム、FM多重VICSを含んだ上級ディスプレイオーディオなどが標準装着される。
この装備の違いにより、90万円の価格差は実質78万円に縮まる。そこに経済産業省から55万円の補助金も交付されると、最終的な実質価格差は23万円だ。この金額で高機能なPHEVが手に入るなら割安だ。
つまりプリウスを買う場合、一般的な買い得グレードは、2Lエンジンを搭載するベーシックな320万円のGになる(このグレードに補助金はない)。そして上級に位置する370万円のZを買うなら、23万円を加えてPHEV・Zにグレードアップさせた方が買い得だ。数年後に売却する時の条件でも有利になる。
ただしこの損得勘定は、あくまでも55万円の補助金を前提に成り立つ。補助金が終了すると、損得勘定の観点だけでいえば、PHEVは一気に割高な仕様になってしまう。
そして補助金は税金から捻出されるため、長期間にわたって続けると、PHEVなどを使わない人達との間で不公平感が拡大する。以前は一部のクリーンディーゼルターボが補助金の交付対象だったが、価格が割安になって普及したから、2023年4月以降は対象外だ。PHEVや電気自動車も、同様の経過を辿らねばならない。
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