国産車も「19インチ」は当たり前!!  大径タイヤ採用のメリットはスタイリングだけってマジですか?

■燃費におけるタイヤが占める走行抵抗の割合は1割ほど

燃費改善における割合は、ゴム量が減るほど≒タイヤ自体が小さくなるほどエネルギーロスと走行抵抗が小さくなる
燃費改善における割合は、ゴム量が減るほど≒タイヤ自体が小さくなるほどエネルギーロスと走行抵抗が小さくなる

 次に燃費。燃費を稼ぐ方法は多々ありますが、そのなかでタイヤが占める割合もそれなりに大きいのです。一般的にはクルマの走行抵抗のうちの10%前後と言われます。

 では、タイヤの走行抵抗はどのように決まるのでしょうか?

 タイヤのグリップを生み出す仕組みのひとつ、そして材料のゴムが持つ特性として「ヒステリシスロス」というものがあります。ざっくりと言うと「ゴムが変形して元に戻る時に、そのエネルギーを熱として放出する」のです。エネルギーロスですからこれが走行抵抗となります。

 そして、同じ変形量ならゴム量が増えれば増えるほどこのエネルギーロスが大きくなります。逆に言うと、ゴム量が減るほど≒タイヤ自体が小さくなるほどエネルギーロスと走行抵抗が小さくなります。そのための狭幅大径低扁平化なのです。

 特にこの燃費はCO2排出量と、ひいては地球温暖化との関連が深いので世界的に規制が厳しくなってきています。そのため自動車開発においても燃費の要請がますます強くなり、狭幅大径低扁平化が進むのです。

■操安性とデザインはどうか?

「今のプリウスはホイールとタイヤ自体も大径ですが、フェンダーモールの黒と相まってより大きく見え、力強くカッコよく見えます」とは筆者の弁
「今のプリウスはホイールとタイヤ自体も大径ですが、フェンダーモールの黒と相まってより大きく見え、力強くカッコよく見えます」とは筆者の弁

 そして操縦安定性。

 緊急回避性能やブレーキ性能のためにはタイヤのグリップは高くなければなりません。しかし、燃費や摩耗性能に背反があるので闇雲には上げられない。それならばタイヤの反応速度を上げて初期からレスポンスよく動くようにすることで補完をします。

 高扁平タイヤではタイヤのたわみが大きく反応速度を上げられませんから、必然的に低扁平にしてレスポンスを上げることになります。

 また、低扁平にすることで高速でまっすぐに走る時からフラフラとせずにどっしりとし、高速直進安定性も高くなるといいことづくめなのです。

 最後にデザイン。

 これはもう、「ホイールは大きくタイヤは薄っぺらいほうが見た目はカッコいい」というそれだけです。事実、今のプリウスはホイールとタイヤ自体も大径ですが、フェンダーモールの黒と相まってより大きく見え、力強くカッコよく見えます。

 昔から「インチアップして車高落としてフェンダーとの隙間を小さくして……」をドレスアップ派が求める理由です。自分の専門とは違うので聞いた話でしかありませんが、カーデザイナーも「大きく力強く見えるサイズのタイヤ」を求めるそうです。

■大径低扁平タイヤのデメリットとは……

プリウスもグレードによっては19インチを採用するなどエコカーといえども昔より変わってきた!?
プリウスもグレードによっては19インチを採用するなどエコカーといえども昔より変わってきた!?

 さて、ここまでメリットを書いてきましたが、大径低扁平化によるデメリットはないのでしょうか?

 やはりあります。単純に硬くなり、乗り心地が悪くなります。ゴム量が少なくなることで低い周波数のフワンボヨンしたクルマ酔いするような揺れは少なくなりますが、ガツガツ、ゴツゴツと周波数の高い尖ったショック感が大きくなります。

 音もうるさくなります。こちらも低いボコボコ、ゴーゴーした音が減る傾向にはありますが、そのいっぽうでアスファルトの骨材からのザーザー、ガーガーとした高い音が増えたり、路面ジョイントを超える際のガツン! という音も増えたりと。

 こうしたデメリットは車体骨格を強固にして制振材を大量に使える高級車や、BEVも同じくバッテリー周辺を強固に造る関係でそこまで顕著になりませんが、普及車ではわかりやすく出てきてしまいます。

 また、ハンドリングでも初期の反応はよく、ちょっとの操作に対してよく動きますが、いっぽうで限界域ではピーキーな扱いづらい挙動になったりもします。限界を超えると一気に滑ってしまう特性は穏やかな高扁平タイヤにはないものです。

「クルマの乗り味の味付け」をする立場としては、このように昨今の大径低扁平化は非常に開発を難しくしてしまうので、やはりほどよいサイズがいいなと思わずにはおれません。

 縁石などに擦ってしまった際も、サイドが低いゆえにホイールに傷がつきやすくなったり、リムガードはあるもののやはりサイドカットからパンクしやすくなったりもします。

 冬タイヤの履き替えを迎え、自分でタイヤ交換する際も最近の大径タイヤは重いですよね。うっかりすると腰を痛めそうですし、ハブに嵌める時も苦労します。保管するにも大きいと場所を取りますし。

 あとはやはり高いですよね。大径化するほど単純に必要な材料も多くなるので値段もどんどん上がってしまいます。

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