有能すぎるバスのLED行先表示器にはなんと60年の研究と努力があった!!

有能すぎるバスのLED行先表示器にはなんと60年の研究と努力があった!!

 板、幕、電子部品と姿を変えながら同じ役割をこなしてきた公共交通機関の行先表示。バスに電子部品=LEDの行先表示器が本格的に使われ始めて20年くらい経つが、この年月の間にも、着実に進化を遂げているようだ。

文・写真:中山修一

■実は超長~い歴史を持つLED

2000年代から急速に浸透したLED式の行先表示
2000年代から急速に浸透したLED式の行先表示

 電気を通わせると光る性質を持った半導体=LEDが「明かり」で世界を制したのはつい最近のように思えるが、そのLEDが発明されたのは何と1960年代まで遡る。しかも原理自体は電球すら珍しかった20世紀初頭には既に発見されていた。

 どうして世に出るまで長い年月を要したのか……それはLEDが光った時に放つ「色」にあった。1962年にアメリカで初めて発明されたLEDは赤のみだった。

 その後も研究が進められ、黄緑、黄色、オレンジ(橙)などのLEDを順次作れるようになったが、色が色だけに、依然使い道が非常に限られていた。

 LEDに広大な応用力を持たせるには、自然な色合いで光らせる必要がある。そのためには光の三原色である赤・緑・青のLEDを揃えないといけない。

 当初、緑と青は技術的に作れなかったのだが、1989年に青色LEDが日本で発明されると風向きが変わった。

 青色(高輝度)LEDの量産化に成功したのは1993年のことだった。1995年には緑色のLEDが作れるようになり、これでどんな光源にも応用できる条件がまとまったわけだが、初期の青色LEDは非常に高価で、気軽に使えるものではなかった。

 まず技術面での課題をクリアするまでの年月と、次にコストの折り合いがつくまでの年月……もちろん他にも様々な要因が絡んでいるだろうが、諸々合わせると、LEDが本格実用化するまで長い歴史を刻む結果になったわけだ。

■オレンジ色が基本? バスの行先表示器

 そんな中で、LEDを公共交通機関の行先表示に用いるアイディアが生まれたのは比較的早く、日本では1988年に実用化している。

 電車に取り付けるタイプで、青色LEDが使われていない行先表示器の場合、行先をオレンジ、急行などの種別を赤や黄緑で表示して色分けするパターンが主流だ。

 バスにLEDの行先表示が使われ始めたのは、大体であるが1990年代末〜2000年代始め頃だ。バスの行先表示器には、視認性が良く外でも目立つという理由からオレンジ色に光るものが多く、黄緑と赤は電車ほど使われない。

 どんな原理で文字情報を伝えるのか……バス車両前面の、おでこの部分に取り付ける行先表示器を例にすると、メーカーによって多少異なるものの、1,300×280mm程度の表示部分に、丸型のLEDが横に192個、縦に40個並べられている。

 行先表示器に使うLEDは1個単位を「ドット」と表現する。合計7,680個あるドットのうち、点灯/非点灯させるドットの位置を制御して、文字や数字、記号、図柄のように見せるのがLED行先表示器の基本的な仕組みだ。

普段は使用しない文字列や図柄もLEDなら簡単に対応できる
普段は使用しない文字列や図柄もLEDなら簡単に対応できる

 横192ドットがどれくらいの広さかと言えば、アタリ2600が192ドット、ファミコンが256ドットなので、ビンテージ家庭用ゲーム機と大体同じくらいの表示領域があるとイメージしておけば良さそうだ。

次ページは : ■「色」がつき始めたLED行先表示器

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