伝説の名車がBEVで甦る!! 日産がR32スカイラインGT-RのEV化プロジェクト開始

R32を3Dスキャンで計測するようすや、部品を外していくようすも公開

 3月29日のVol.2では、EVへのコンバージョンにかける思いが公開されている。「GT-Rに憧れて入社した技術者が、今自分が最高と思う技術を組み合わせる」という部分から、おそらく筆者と同じく、若手時代を第2世代GT-R(R32~R34)を見ながら過ごした30代から40代の日産社員の中堅層によるプロジェクトだと推察される。第3世代(R35)を選ばなかったのは、現行のR35プロジェクトに影響を及ぼしかねなかいとの判断だったのかもしれないが、だが、なぜR32だったのか(シルビアやフェアレディZでもよかったのでは?)という疑問はある。

 続いて、4月6日のVol.3では、EVコンバージョンするR32型スカイラインGT-Rの姿が公開された。日産の試作部のようだが、お馴染みのガングレーメタリック(カラーナンバーはKH2)のR32は、外装や内装、エンジンルームも比較的きれいで、かなり状態のいい個体のようだ(「きれいすぎてもったいない」というSNSのコメントも多かった)。

Vol.3で公開となったEVコンバージョンするR32型スカイラインGT-Rのベース車。エンジンルーム内も綺麗で、改造のベースにするにはもったいないようにも思える
Vol.3で公開となったEVコンバージョンするR32型スカイラインGT-Rのベース車。エンジンルーム内も綺麗で、改造のベースにするにはもったいないようにも思える

 続く4月13日のVol.4では、3Dスキャンをする姿を確認。エクステリアからインテリア、さらにエンジンルームまで、計測のためにたくさんのマーカーを貼り、3Dスキャナーをあててデータ化している。3Dスキャンは、他社車のボディ形状を測定してデジタル化することで空力性能を詳細分析したり、一品モノのパーツ試作をする(ドアをカーボン化する等)ため等で使うことがあるが、自社モデルであるR32を、しかもエンジンルームだけでなく、なぜ内外装まで詳細にデータ化したのか。

 ちなみに、AE86のコンバートでは、エクステリアは変えておらず(ステッカーチューンだけ)、内装はバッテリーや水素タンクを積むために改装していた。SNSでは、「このR32がサンプルで、もう一台をゼロから起こすのでは」という声や、「コンバートと同時にカスタムも施すのでは」、「コンバートと同時にヘリテージ用のパーツ製作もするのか!?」という声もあった。

Vol.4で公開された3Dスキャンの様子。エクステリアからインテリア、エンジンルームにいたるまで、データ化している
Vol.4で公開された3Dスキャンの様子。エクステリアからインテリア、エンジンルームにいたるまで、データ化している

 そして、4月20日のVol.5では、ハンドル、シフトレバー、インパネ、シートなどを外し、車両分解する様子が公開された。日産の説明では、「新しく生まれ変わるために内装部品が丁寧に取り外されていきます。」とのこと。このあと、ホワイトボディ(内装や配線、エンジン、サスペンションまでおろしたボディだけの姿)にまで分解して、ボディ再塗装や補強までされるのかは不明だが、ひとまず順調に始まったようだ。

Vol.5で公開された分解時の様子。ハンドル、シフトレバー、インパネ、シートなど、新しく生まれ変わるために内装部品が丁寧に取り外されていく
Vol.5で公開された分解時の様子。ハンドル、シフトレバー、インパネ、シートなど、新しく生まれ変わるために内装部品が丁寧に取り外されていく

R32のガワでe-4ORCEのバッテリーEV がつくられるのでは

 なぜR32スカイラインGT-Rを選んだのかについては、おそらく、電動4WDシステム(e-4ORCEなど)を投入するため、4WD車が必要だったのではないか、と筆者は推測している。また、AE86のEVコンバージョンがクラッチ付き5速マニュアルトランスミッションの電動車であることを考えれば、このR32でも同様にマニュアルトランスミッションを残し、トヨタに対抗していただきたい。

 また、3Dスキャンで計測していた点については、おそらく、車内が狭いR32 GT-Rに、高容量の駆動用バッテリーを積むため、詳細なサイズ計測が必要だったのだろう。R32開発当時は、いまほどデジタル設計が浸透しておらず、部分的には紙で図面を起こしているものもあるはず。クルマの外観を変えずにギリギリまで室内に電動パワーユニット及びバッテリーをパッケージングするためには、改めてサイズ計測をする必要があったのだろう。もっとも容積が必要となる駆動用バッテリーは後席スペースもしくはトランク内になるはずだが、運転席周りも電動ユニットのコントローラーなどを装備するため、内装についても計測が必要だったのではないだろうか。

 ということで、Vol.5までで予測されるR32EVプロジェクトの全貌は、R32型スカイラインGT-Rの「ガワ」で、中身はe-4ORCEのバッテリーEVをつくる、ということだろうと予測できる。最新の日産の技術を投入したR32 GT-Rの姿は、電動パワートレインを担当する日産社員のモチベーションアップにもつながるはずだ。

 ただ、R32スカイラインGT-Rを象徴するのは、なんといっても、2.6リッター直列6気筒のRB26DETTエンジンだ。EV化というからにはエンジンは降ろされてしまうことにはなるが、あのサウンドや振動は再現されることを期待したい。日産は電動車の走行サウンドに相当こだわりをもっている。ベース車のエンジンからサンプリングした音をスピーカーから流す、といったことは余裕でできるはずだ。

 週に一度のペースで最新話が公開されているので、次の第6話は5月前半には公開となるはず。サウンドをサンプリングしている姿でも収録されていれば、スカイラインファンとしては非常にうれしいこと。今後の動向に期待だ。

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