■中国勢はスマートグリッド構想やその先までを想定して動いている?
続いて2)は日米欧勢メーカーが最も苦労している部分といえる。トヨタを見ると「アリーン」と呼ばれる電気自動車用次世代OSを総力挙げて開発しているし、ソニーホンダモビリティはソニーが専用OSを作っているという。
具体的に説明すると、例えば先ほど挙げたスマートグリッド。太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーは発電量が時々刻々と変化していく。有効に利用しようとすれば蓄電池が必要。
電気自動車を充電カプラーに繋いでおけば蓄電池として使えるため、相当な容量の電力を出し入れできる。余った時は充電。足りなくなったら放電します。そのコントロールは現在の車載OSだと難しい。
中国勢はスマートグリッドや、交通の流れの統合システム、クラウドやビッグデータを使うことまで想定したコネクテッド機能など動かせる。トヨタのアリーンは2025年の完成を目指してます。
■内外装のデザインも中国車は驚くべき進化を見せている
3)についていえば今まで中国勢が最も苦手としてジャンル。文化やブランドを持っていなかったため、日米欧の人気車をパクるしか手はなかった。上海モーターショーに出展された中国勢を見ると依然パクりが残るものの、BYDやNIOなど世界的に高い評価を受けているデザイナーをヘッドハンティングして起用。小さい車種から高額車まで素晴らしいデザインが次々と出てきた。
特に日米欧のデザイナーは電気自動車的なフロントデザインに四苦八苦している。ポルシェですら電気自動車らしさを出せていない。対する中国勢は電気自動車しか考えていない。
デザイナーも新進気鋭の人材を多くのメーカーが投入してきており、新しい世代の電気自動車の輪郭やイメージが生まれつつあるように思う。日米欧はエンジン車を引きずってます。
■もはや日欧米勢のアドバンテージはなし?
4)については、これまた日米欧の技術者や企業が中国メーカーで働いたり、協業するなどしたりして急速にレベルアップしてきた。日本の有名金型メーカーすら居抜きで中国メーカーに買われるほど。
上海モーターショーに出展されたクルマの品質レベルを見て驚愕する日米欧の自動車関係者が多かったという。もう2~3年で完全に追いつかれるだろう。時間の問題だと言ってよい。
強烈なのは中国政府も企業も競争や淘汰を恐れていないこと。日米欧は業績悪化を極端に嫌い、大胆な勝負に出ない。中国の新興メーカーを見ると破綻など恐れていないように見える。
当然ながら競争力のない新興勢力は淘汰されていく。中国では2022年から電気自動車に対する政府からの補助金が出なくなったこともあり、上海モーターショーで存在感を出せているメーカーは強いと思う。
最後に、首脳陣が上海モーターショーを現場で見たトヨタは「このままだとトヨタはなくなる!」という危機感を持ったようだけれど、そういった声が聞こえてこないホンダや日産の社内では「ウチの会社は大丈夫なのか」という声が数多く出ているようだ。個人的には大丈夫じゃないと考えます。
【画像ギャラリー】上海モーターショーで見せつけたその進化ぶり! 日本車メーカーは中国車に危機感を抱かないとヤバい?(19枚)画像ギャラリー
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