今回の上海ショーに行ったトヨタの中嶋裕樹副社長らは現地を見て「このままじゃヤバい!」と帰国後にEV戦略の巻き返しを図っている一方、先日ホンダの三部敏弘社長が発表したビジネスアップデートには肩透かしを食らったという国沢光宏氏。今こそ国産メーカーに対し、中国勢への危機感を訴える!
文/国沢光宏、写真/ベストカーWeb編集部
■上海モーターショー2023でまざまざと見せつけた中国勢メーカーの躍進!
2023年の上海モーターショーでの中国勢の躍進ぶりは、世界中の自動車メーカーに衝撃を与えたと思う。新型コロナ禍により停滞するどころか、日欧米メーカーの3~5倍の早さで技術革新が進んでいたのだった。
大きな衝撃を与えたファクターは、大きく次の4つに分けられると思う。
1)電池技術
2)OSに代表される制御技術
3)内外装デザイン
4)ハードの仕上がりレベル
である。
すべて日米欧のメーカーの進化速度が鈍くなっている部分といってよい。もう少し本質的なところを書くなら、日米欧メーカーはエンジン車の文法から抜け出せていないんだと思う。
電池の技術はもちろん、同じくらい重要なのがOS(オペレーションシステム。クルマを制御するPCでの「ウィンドウズ」のようなもの)。トヨタなども電気自動車時代のOS開発に膨大なリソースをつぎ込んでいるほど。
■中国の主力は三元系と同等体積&同等容量持つ安価なリン酸鉄リチウムイオン
1)から紹介していきたい。日米欧の主力電池は依然として日本が世界に先駆けて実用化した三元系リチウムイオン電池である。ニッケル、マンガン、コバルトなどの希少金属を使ううえ、すでにこれ以上の性能向上は難しくなってきた。
加えて充放電回数も最大で800回程度。航続距離300kmの電池なら、24万km程度の走行で80%を割り込む容量になってしまうということ。
中国勢はすでに安価で燃えず、作りやすいリン酸鉄リチウム電池の小型化が進行しており、今や三元系リチウム電池と同等の体積で同等の電池容量を確保できるまでになってきた。
充放電可能回数も3000回以上を実現しており、航続距離300kmの電池なら90万km以上走行可能という使い切れないくらいの寿命を持つ。これだけの寿命を持つとスマートグリッド用(後述:編註=電気の利用量や使い方をリアルタイムで把握し、そのデータを活用して電力の有効利用を実現する次世代型エネルギーシステム)の電池としても使えます。
そのうえで上海モーターショーでは世界最大の電池メーカーであるCATLが「凝聚態電池」(コンデンスドバッテリー)という半固体電池を出してきた。三元系リチウム電池の2倍程度のポテンシャルを持つという。
さらにBYDはリン酸鉄リチウムより安価な「ナトリウム電池」を搭載した新型車を出展している。こういった電池が実用化されたら三元系リチウム電池など勝負にならない。
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