バスの屋根に注目して、まず目立つのはエアコンと換気扇。そこから更によ〜〜く観察すると、まるでラジコンカーのようにアンテナがニョキニョキ生えているのに気付くハズだ。プロポで操縦するためとは思えないが、果たして何のためのアンテナなのだろうか?
文・写真:中山修一
■細いの、太いの、平たいの、種類豊富なバスのアンテナ
バスの屋根上に立てられたアンテナの位置で最も多いのが、エアコン(ハイブリッド路線車ならバッテリー)が置かれている場所よりも前寄りの一帯、運転席の真上あたりだ。
全国共通のルールや法則性はまったくないのだが、アンテナの数は1本だけに収まらず、2本、3本あるいはそれ以上と、それぞれバラバラの形状をしたアンテナ達が、ひとつ屋根の上に同居している。
1台のバス車両でそんなに沢山の電波を拾ったり投げたりする必要があるのかと、首を傾げたくなる。それでもタダの飾りである確率が0%に迫るのは目に見えているゆえ、アンテナの種類ごとに別々の機能を持っているに違いない。
バスが新車の段階から、アンテナを3つも4つもゴチャゴチャくっ付けている訳ではなく、各事業者が必要に応じて後付けしていくのが基本になっている。
そのため、事業者によって選ぶアンテナの形状や使い方が多少違うはずで、「このアンテナなら全部この目的」とまではサスガに言えない。
ここでは、とりわけアンテナ満艦飾な路線車が魅力の、横浜市営バスが公開している仕様書を参考に話を進めていこう。
■どれがどれ? アンテナが持つ役割
まずは、棒の部分が金属製で最も細長く、付け根の部分が動くようになっていて、角度や向きを変えられるタイプだ。
昔のクルマに付いていたラジオアンテナを彷彿とさせる、いかにもな形をしているが、ずばりラジオ用のアンテナとなっている。
カーラジオを流しながら営業運転する路線バスもなくはない。しかしここでの路線車の場合、一般的なカーラジオではなく、アンテナから伸びたケーブルが繋がる先は、災害時に起動する緊急ラジオだ。
続いては、棒の部分が短めで黒色をしていて、屋根に対して垂直に立っている形状のアンテナだ。こちらはバス営業所と音声で連絡を取り合う際に用いる、無線機の電波を送受信するものだ。
姿形が上記の無線アンテナとよく似ていて、棒の部分が無線用よりも平たく、角度が付けられたアンテナもある。
近年は位置情報システムや車内表示器、運賃の支払い時などにデジタル技術が多用されるようになった。走行中もデータのやり取りが行われるということで、ラジオや音声無線のほかデータの送受信に用いるアンテナが必要となる。
平たく斜めのアンテナは主にデータ通信用に使われるようで、携帯電話の回線を利用している。このアンテナから伸びたケーブルは、バスの情報機器類の主制御装置に繋がっている。
もう一つ同じ制御装置に接続されてるのが、屋根の上に貼り付けるような形で置かれた、丸く平たい黒色の突起物だ。この丸い突起物もアンテナの一種で、2.4Gの無線LANを介してデータ通信を行う。
中でも特に細かいのが、黒くて平たく、四角い形をした突起物だ。通信系は一通り登場しており、残すところ何の目的かと言えば、GPSのアンテナである。