タイヤで発生する渦を整流するエアカーテン
タイヤ周りのエアロパーツで、最近もうひとつよく見かけるのが、エアカーテンです。回転するタイヤで巻き上げられた走行風は、ホイールハウスに留まるだけでなく、一部はホイールハウスから外に噴き出し、ボディ側面に沿った流れを遮り、スムーズな流れを阻害します。
エアカーテンは、フロントエプロンの左右両端に設置されたエアインテークから取り込まれた空気を、フロントインナーフェンダーのスリットに導き、ホイールアーチへ放出する手法です。この空気の流れによって、フロントホイールの側面をカーテンのようにブロックしてホイールハウスから噴き出す流れを整流、ボディ側面の流れをスムーズにして空気抵抗を低減するのです。
エアカーテンは、2012年頃からBMWを中心に高速走行の頻度の高い欧州車で普及し、現在は日本車でも高性能モデルに限らず、軽自動車、ミニバンなど含めてすべての車種で採用が進んでいます。
BEVの普及で、空気抵抗低減はさらに重要に
一般にクルマ全体の走行抵抗のうち、空気抵抗が占める割合は、比較的車速の高い市街地走行で20%程度です。その空気抵抗のうち、ボディ全体のフォルムの影響が40%、タイヤ周りで発生する損失が30%、クルマのフロア下部の流れによる損失が20%、クルマの開口部での損失が10%とされています。
以上の前提では、タイヤで発生する損失は、全走行抵抗の6%ということになります。例えば、タイヤ周りの損失を20%改善しても、全走行抵抗の1.2%程度の損失低減となり、燃費低減効果も1%程度と予想されます。非常に小さな効果のように思えますが、CO2低減(燃費向上)が至上命題となっている現在、これは決して小さな効果ではないのです。
また、ボディ表面の渦は車速に応じて周期的に発生して不規則に車体を揺するので、渦を抑制できれば走行安定性や旋回性能を改善できます。日産の新型「セレナ」では、エアカーテンによって横風等によるふらつきを抑え、先代と比べてヨーモーメントが20%低減できたとしています。
近年特に、空力性能に注目が集まっている背景には、B(バッテリー)EVの躍進があります。BEVのパワートレインの効率は、内燃機関よりはるかに高いため、空力性能の影響が内燃機関の2~3倍ほど大きく、空気抵抗を減らすことで電費が向上し、満充電の航続距離を伸ばすことが可能なのです。
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タイヤディフレクターやエアカーテンだけでなく、ドアミラーやコンビランプなどに付けられた小さなルアーのような突起のエアロスタビライジングフィンが、トヨタ車を中心に、多くのクルマで採用されています。それぞれの効果は大きくありませんが、「チリも積もれば」で組み合わせれば、少しずつ成果を積み上げることが可能。空力抵抗の低減は、BEVの性能向上や航続距離延長の切り札になる可能性さえあるのです。
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コメント
コメントの使い方昭和の時代にはエアロディッシュホイールやナット部をカバー付きにする事でタイヤ周りを整流する物があったが継続はしていないですね。
車体はエアロでCD値競い合うほど。ただ、日本では恩恵に預かれるほどの物ではない。OPでエアロ有りが車体デザインで一体化する。
もはやミニバンタイプではクーペやセダンに空気抵抗では敵わない。
高速でも100キロ、街中だと40~60キロ程度の日本では、空気抵抗なんてほとんど考えるに値しません。
燃費や車体の安定感を求めるのなら、空気抵抗を気にするより、ドライバーが痩せるのが一番ですw
Le系譜 様
>BEVのパワートレインの効率は、内燃機関よりはるかに高いため ここだけ逆にするとすっきり読めるかもです
様々に数字を出していて、どういう計算だろうと興味深く読み進めていました。しかし
>BEVのパワートレインの効率は、内燃機関よりはるかに高いため
この言葉と結局最後まで根拠示さなかったことで、記事全体が信用できなくなってしまいました。
車での速度変換効率こそEVは高く見えますが発電効率や送電・充電ロス含めると内燃機関が14%も効率がいい上に、重量エネルギー効率では80~100倍ガソリンが優れています