電気自動車の価格はどこまで下がるのか? どこまで下げれば普及するのか??

普及させるのならば、「ハイブリッド車並み」ではなく、「ガソリン車並み」にまで必要がある

 「ハイパフォーマンス版」といわれる「さらなる進化」の電池は、対外アピール用としてごく一部のBEVにしか搭載されないはずなのでさておき、この2種類の次世代電池のうち、BEV普及のカギとなるのは「普及版」だろう。バッテリーコストが40%削減されると、ハリアーハイブリッド(「Z」税込462万円)と近しい価格で、bZ4X(「Z」税込600万円)が買えるようになると考えてよいと思われ、いまよりはBEVが現実的になる。

 ただ、従来のハイブリッド車と同等の価格となっても、BEVが爆売れするようなことはないだろう。すでにBEVを所有している人や、過去に所有していた人(筆者も過去に2年ほど日産リーフを所有していた)は、メリットもデメリットもよく理解されているだろうが、クルマを使っての移動の際の時間の使い方がガラッと変わる。「待つ」ことが増え、どこで充電をしてその間何をして待つか、というのを常に考えておく必要があるのだ。

 もちろん、近所の買い物に使ったり、通勤で毎日往復40km~50kmのほど乗るクルマであれば、自宅での充電で十分であり、そんな心配もないのだろうが、休日に遠方へドライブや旅行に出かけることの多い場合は、BEVでは苦しくなる。たまにならよいが、毎回だと徐々にストレスに感じてきてしまうのだ。

 不便に感じる(かもしれない)ものに乗り換えるのだから、それを普及させるには、ハイブリッド車よりもさらに下、ガソリン車並み(ハリアーだと「ガソリンZ」403万円)の価格帯を狙わなければ難しく、そこからさらに、国や自治体からの補助金が用意されて、320~340万円ほどでbZ4XクラスのBEVが手に入るとなって、やっと購入検討する人が一気に増える、といったところではないだろうか。

2023年4月の上海国際モーターショーで世界初披露された「bZ Sport Crossover Concept」と「bZ FlexSpace Concept」。これらを普及させるには、クルマを磨くのと同時に、充電ポイントと充電スピードの改善が急務
2023年4月の上海国際モーターショーで世界初披露された「bZ Sport Crossover Concept」と「bZ FlexSpace Concept」。これらを普及させるには、クルマを磨くのと同時に、充電ポイントと充電スピードの改善が急務

充電環境のさらなる充実も必要

 また、車両価格と同じくらい、自宅以外でいつでも空いている充電ポイントの数と、充電スピードの改善がなされることも必要。1000kmなんていう航続距離よりも、車両価格の低減と充電環境のさらなる充実こそが、BEV普及の鍵なのではないだろうか。

 その点で、今回のトヨタの発表は、まだまだ道半ばではあるものの、BEV普及へ一歩近づいたように思う。次世代バッテリーを搭載したBEVの登場を、期待して待ちたい。

【画像ギャラリー】上海国際モーターショー2023で世界初披露されたトヨタのBEV「bZ Sport Crossover Concept」と「bZ FlexSpace Concept」(7枚)画像ギャラリー

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