昨今は被害軽減ブレーキを搭載した車両が非常に多くなってきている。よそ見や人間の死角からの飛び出しなどにも対応し、自動車の安全性を引き上げている技術だ。
しかしそんな被害軽減ブレーキ搭載車両には多くの制約が伴う。例えば車高の上下だ。スポーツモデルなど車高を下げたいオーナー、もしくはSUVなどで車高を上げたいオーナーなどには死活問題だろう。
いったいどこまで車高の上下をすると被害軽減ブレーキは作動しなくなるのか。実際に試したジャーナリストに聞いてみました。
文:国沢光宏/写真:SUBARU
ベストカー2019年5月26日号
■「自動ブレーキは車高に敏感」は真実なのか?
世の中コンプライアンスだらけである。確かに決められたことしかしなければリスクなし。最近「自動ブレーキ付きのクルマは車高を変えると効かなくなる」というウワサが飛び交っているのだった。
実際、スバル車に乗っている人たちの間では「アイサイトは車高に敏感。だからSTIで車高低くした車種を出そうとしても入念な試験や調整が必要なので簡単じゃない」という件、広く知られている。
この点、私もSTIに聞いて原稿で紹介した。結果、スバルディーラーでは車高調整式サス付きのクルマの整備を受けないケースも多い。
果たして自動ブレーキ付き車は車高調整式サスで稼働しなくなるのだろうか? 結論から書いてしまうと「極端なことをしなければ問題なし!」。考えてほしい。
ステーションワゴンなどラゲッジスペースに荷物たくさん積むと、前上がりの姿勢になる。この状態で前方を見ているセンサーは、車高を変えたクルマより酷いセンサー角になる。
STIの件と関係ない時、スバルに「ラゲッジスペースに荷物積んだらカメラが上を向いちゃいませんか?」と聞いたら「当然そういった使い方は想定しています。大丈夫ですよ〜!」とキッパリ答えてくれた。
そらそうでしょう。自動車メーカーのロバスト試験(悪条件下での強さ)はけっこうハード。
だとしたらSTIで車高を20mm低くすることもできないのはなんでだろう? このあたりが我が国から元気を奪っているコンプライアンス問題でしょう。
■実験をしたら前後30mmダウンでも問題なし??
2年ほど前のこと。サスペンションを作っているTEINの藤本さんから連絡あり「車高を変えたら自動ブレーキが効かなくなるって本当でしょうか?」と聞かれた。
だったら試験してみましょうか、と言うと「やりましょう。クルマやサスペンションは用意します」。
ということで実際に車高変えを試してみた。例えばリアだけ40mmほど車高を落とした状態。
これ、ラゲッジに荷物をたくさん積んで上を向いてるイメージです。するとどうよ! スバルもトヨタも普通に稼働した。
逆にリアを標準。フロントだけ40mm落として試験すると、これまた普通に稼働。もう少し正確に書くと、リア落とした時は500mくらい走って学習制御したあと、普通に稼働するようになった。
フロント落とした時は学習制御なしで普通に稼働している。走行中、ノーズダイブすることは多いため、フロント車高低い時のロバスト性はリア低くするより強いということなんだろう。
ちなみにダメだったのは、リア40mmダウン。フロントを限界まで上げた酷い姿勢の時だけでした。
ということで、前後の車高を30mmずつ下げたり上げたりするくらいなら、自動ブレーキは普通に稼働します。
じゃなぜ「保証しない」と言われるかといえば、責任逃れです。試験をしていない部品付けても、何かあった時に保証することはできないということ。
個人的には「当然でしょうね」。そもそもノーマル状態に手を加えた時点でオウンリスクだと思う。
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