アイドリングストップは「オフ」のほうがお得か? トヨタは「今後も採用しない方針」

オフにしておいたほうが、バッテリーが長持ちする

 冒頭で触れたように、アイドリングストップの目的は燃料消費量の低減(=CO2排出量削減)だ。その効果はどのくらいなのかというと、一般的な2.0Lクラスのエンジン車の場合、10分間のアイドリングで消費するガソリンは130mlほどで、1時間だと780ml、ガソリン代に換算すると1時間あたり140.4円(2023年9月上旬時点のレギュラーガソリン全国平均180円/Lで算出)となる。

 これがアイドリングストップをオンにしていれば削減されるわけだが、1時間ものアイドリングストップは、長い渋滞やストップ&ゴーが相当激しい環境下でないと到達するとは考えにくく、ガソリン代の節約量も正直なところ微々たるもの。

 燃料代だけみれば「それでもないよりはマシ」と思えるが、実はアイドリングストップ機能を使うことで、バッテリーの劣化が早まり、バッテリーにかかるコストが増えてしまう。アイドリングストップ搭載車のバッテリーは、アイドリングストップ非搭載車用のバッテリーよりも交換サイクルが早く、アイドリングストップ非搭載車の「3~4年に1度」に対し、アイドリングストップ車用バッテリーは多くの場合「18か月または24か月」と、おおよそ「2分の1」程度の寿命。そのうえ、アイドリングストップ車のバッテリーは非搭載車のそれよりも1.5倍ほど高価。アイドリングストップ車は、頻繁に始動と停止を繰り返すことでバッテリーにかかる負荷が大きいため、高性能なバッテリーを短いサイクルで交換する必要があるからだ。

 昨今の物価高騰のなか、バッテリーの交換頻度がこれ以上早まるのはお財布に厳しく、また上記で試算した通り、アイドリングストップによって得をしたガソリン代では、このバッテリーにかかるコストをカバーしきれない。アイドリングストップに関してはほかにも、再始動時のもたつきや振動・騒音を嫌う人も多く、また、高性能なバッテリーの交換サイクルが早まることが(多少CO2排出量が削減されたとしても)ほんとうに環境によいのかという、環境面での疑問もある。アイドリングストップ搭載車であっても、機能をオフにしておくことで、バッテリーの交換頻度は長くすることが可能。少なくとも、コストや使用感で考えた時には、アイドリングストップはオフにしておいたほうがいいと考えられる。

アイドリングストップ機構によって、ガソリン消費量はたしかに軽減されるが微々たる量。バッテリー交換費用を考慮すると割高になる(PHOTO:Adobe Stock_varts)
アイドリングストップ機構によって、ガソリン消費量はたしかに軽減されるが微々たる量。バッテリー交換費用を考慮すると割高になる(PHOTO:Adobe Stock_varts)

ハイブリッド車は従来型の補機バッテリーが使えるため、アイドリングストップ車用のバッテリーはいずれ必要なくなる

 ハイブリッド車(この場合はストロングハイブリッド)は、基本的には駆動用バッテリーで駆動用モーターを回してスタートするため、ガソリン車のように発進のたびにエンジンを再始動することはなく、エンジンの動力や発電が必要となったときにエンジンを再始動させるので補機バッテリーにかかる負荷は格段に少ない。そのため、アイドリングストップをしても従来の補機バッテリーで十分であり、どのメーカーのハイブリッド車も、概ね従来の補機バッテリーを搭載しているようだ。

 日産は、ノート/ノートオーラ、キックス、エクストレイルなどの主力車種をe-POWER専用車とする戦略をとっている。トヨタやホンダも、ガソリン車を残してはいるが、販売の大半はハイブリッド車だ。コスト命だった軽自動車も今後は電動化が一気に進むはずで、本稿でとりあげた純ガソリン車向けのアイドリングストップ機構はいずれ役目を終えていくため、各自動車メーカーとしてもそれほど注力していない、というのが現状なのだろう。

ハイブリッド車は、ガソリン車のように発進のたびにエンジンを再始動することはなく、従来型の補機バッテリーが使える。アイドリングストップ車用のバッテリーはいずれ必要なくなる(PHOTO:Adobe Stock_siro46)
ハイブリッド車は、ガソリン車のように発進のたびにエンジンを再始動することはなく、従来型の補機バッテリーが使える。アイドリングストップ車用のバッテリーはいずれ必要なくなる(PHOTO:Adobe Stock_siro46)
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