電動車の場合は、暖まりすぎるのはかえってよくない
また、PHEV含むハイブリッド車やバッテリーEVに関しては、発進時はモーター駆動であることから、エンジン全体へエンジンオイルを行き渡らせる「暖機運転」はそもそもできませんし(バッテリーEVにはエンジンはないですし)、その代わりである駆動用バッテリーに関しても、電動車に搭載されている駆動用バッテリーの適正温度は20~30度といわれており、高速走行をした後などでバッテリーの温度が高くなりすぎると、バッテリーにダメージが及ばないよう、温度上昇保護機能によってクルマ側が充電速度をセーブするなど、温度は高すぎないほうがいいもの。
もちろん電動車であっても、エネルギーを消費しながら走るわけですので、環境面からもいわゆる暖機運転はできるだけ避けるべきなのですが、電動車の場合は、暖機運転は意味がないどころか、クルマにダメージを及ぼしかねない行為なのです。
余談ですが、動力用バッテリーの冷却は、これまで空冷式がほとんどでしたが、昨今は液冷式も増えています。たとえば、軽EVの日産「サクラ」/三菱「eKクロスEV」には、エアコン冷媒を用いた廉価な冷却システムが投入されています。高額になりがちだった冷却装置を、廉価に実現した素晴らしい技術であり、前述した純ガソリン車同様に、バッテリーEVも新たな技術開発によって、日々環境性能が向上しています。
基本的にはクルマ任せにしておけばOK
暖機運転に関しては、自動車メーカーも基本的には不要としており、たとえば、日産車の場合は「長期間、車を使用しなかったときや極低温のときは、数十秒の暖機運転を行なってから走行を開始してください。それ以外の場合は、エンジンを始動したら、すみやかに走行を開始してください」と、記載されています。自動車メーカーはクルマを開発する際、零下50度のような極低温地帯から摂氏50度を超えるような高温地帯など、あらゆるシチュエーションでシミュレーションと実験を行い、念入りに燃焼プロシージャ(手順)をチューニングしています。そのため、エンジンの暖機はクルマ任せにしておけばよく、普通に使うぶんには、特に我々が暖機を気にする必要はありません。
ただ、冬場の朝などは、クルマ全体を暖める「暖機走行」は心がけてほしいところ。ミッション(ミッションオイル)、デフ(デフオイル)、ブレーキ、ハブベアリングやドライブシャフトのグリスなどは走ることで、徐々に冷えが解消していき、スムーズに動くようになっていきます。ゆっくり走行しながらクルマを暖めることができれば、それが現代の暖機運転だと考えます。
【画像ギャラリー】HVでもEVでも必要? いらない?? 「暖機運転」の常識 最新版(6枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方