■メディアに地域PRもお願いすることに
そうして調べた結果、いくつかの条件を満たせば公道を占有し、ナンバーがない車両が走行できる可能性があることがわかった。ただし、警察や自治体といった地元関係者の理解がないと占有できないとのことで、どうやったら理解を得られるか、再び考える日々が続いたそう。
ちなみに都市部では、多くの交通を遮断するのは難しく、公道占有は実質不可能なこともわかったという。
数日後、彼は交通量がかぎられる地方はどうか? と上司に提案した。確かに物理的には可能かもしれないが、地元関係者の理解をどう得るかに対するアイディアを考えないといけない。彼は日頃の試乗会運営でお世話になっていた旅行会社に相談へ行き、地方特有の傾向と課題を確認。
観光における地域活性化の視点で、PRに力を入れているところが多いことがわかった。旅行会社から聞いた話を踏まえて彼は、試乗会で誘致したメディアに地域のPRをすることを条件に、公道占有させてもらう交渉を思いついたのだという。
試乗会に誘致するのは、自動車メディアが大半となり、自治体としてはこれまで接点のないメディアを開拓し露出することができる。また、観光PRとなれば、クルマと旅行の親和性もいい。その線で交渉することにしたという。
■各社ともに「すべてが初めての経験」
交渉の切り口は決めたものの、観光に力を入れている自治体は全国に無数にあり、どこに狙いを定めるかが悩ましかったそう。そこでレイバックが持つ世界感を表現できる場所、言い換えればレイバックを購入するユーザーが実際に行ってみたい場所を候補地にしようと決めた。
候補地を全国で10カ所ほどに絞り込み、旅行会社のネットワークを活用させてもらったうえで、各地域の観光協会に企画を提案して回った。そのなかで関心を持ってくれた観光協会は2カ所で、多岐に渡る交渉の結果、新潟県の佐渡島が最有力候補地になったという。
佐渡島は世界遺産登録を目指し、近年PRに力を入れており、歴史もあって自然豊かな、まさしくレイバックに乗って出かけてみたい場所にふさわしいところであった。
佐渡観光交流機構若手担当者の三條氏もスバル側の企画には興味を示しており、WEBやYouTubeといった露出効果も見込めるということから、実現に向けて協力してくれることとなったそう。
両社にPR会社も加えて具体的な検討を始めることとなったが、各社このような前例はなく、初めての経験であり、何をどこから調整しようかといった具合であったが、各社ともに若手担当者ということもあってか、手探りではあったが、コミュニケーションを深めながら実現に向けて徐々に進み始めた。
公道占有する場所については、佐渡観光協力機構の三條氏のアドバイスもあり、「大佐渡スカイライン」に目星をつけた。周辺に民家はなく、う回路もあるため、交通を一時的であれば遮断できる可能性があった。
そこで、佐渡観光協力機構の三條さん経由で、佐渡警察署に相談。佐渡警察署の担当者もやはり一企業が公道占有した前例はないとのことで、即答は得られなかった。
試乗会は8月末を予定していたため、回答のタイミングや結果によっては、ほかの会場で実施しないといけないことも考えると、代替地でやる準備も並行して進めないといけなかった。
また、スバルでは試乗会実施の場合、メディア対応要員として、現場に開発責任者をはじめ多くの開発メンバーを帯同させる必要がある。メンバーのスケジュールも早めに確定しないといけなかったが、開発メンバーのスケジュールを取りまとめしている商品企画本部主査の夘埜敏雄氏に相談し、佐渡で交渉している旨を説明。
その夘埜氏から「新たな取り組みにチャレンジしているなら応援しているし、スケジュールはギリギリまで待つよ」と心強い言葉ももらうことができて、彼としてはさらなる励みにつながったという。
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