重量が軽いことから、いい意味でオーバースペックに
もうひとつ、クルマの重量の差も、ベースグレードのほうが優れる傾向にある点だ。たとえばメルセデスCクラス(W206)のように、C180、C200、C220dと、同じボディでグレードごとにパワートレインを使い分ける場合(AMGは除く)、一般的には、最も重たいグレードを基準にして、衝突性能や耐久性能などが設計される。Cクラスの比較だと、直4ガソリンエンジンのC180(車両重量1650kg)に対して、ディーゼルターボのC220d(1750kg、AMGパッケージとスライディングサンルーフを付けると1820kg)が最重量となり、これを基準に車体構造や剛性設計がなされることになる。
こうした場合、ベースグレードのほうがパワートレインは軽くなるため(上記の場合だと170kg差)、いい意味で「オーバースペック」となる。つまりは、重量級グレードを考慮した強靭な車体に、軽量なパワートレインが組み合わされるので、その運動性能の差は歴然。ベースグレードは、もっとも優れた走りとなるのだ。
この「タイヤ入力の小ささ」と「強靭な車体に軽いパワートレイン」、このふたつのメリットが揃うことで、ベースグレードのほうが優れている、となるわけだ。これはもちろん国産車も同様に当てはまる。
ベースグレードの話からはすこしそれるが、国産車の大径タイヤ採用に関しては、クルマによっては車格に見合わない大径タイヤを履いていることで、突き上げ感とロードノイズが同カテゴリの他車よりも悪くなってしまっていることがある。Cセグメントへの19インチや、ミニバンへの18インチ、ミドルクラスSUVへの19インチなど、明らかに無理が生じており、たしかにカッコよくはなるのだが、見た目を重視するあまり、まっとうなタイヤ選定やボディ剛性などの対策が十分になされていないよう感じられる(ちなみにカローラツーリングの話。ベースのセダン(15インチ)のよさを17インチタイヤで台無しにしている)。
16インチなのに、18インチに見えるホイールデザインが登場してほしい!!
昨今はどの自動車メーカーも、上級グレードを推しており、最上級グレードでないと「ダサい」といった雰囲気すらあるように感じる。上級グレードは、全ての装備が豪華仕様になっているので、どうしても魅力的に映る。ハイパワーなエンジンやプラグインハイブリッド(とても重たくなる)、カッコいいエアロパーツを付けたり、大径ホイールで幅太のハイグリップタイヤを履き(これらも重たくなる)、内装もゴージャスに飾ったほうが、商品としては圧倒的に魅力的だ(筆者も、そのほうが好き)。
その反面、ベースグレードは、タイヤのゴム部がとても厚く、エクステリアやインテリアもシンプル(簡素)で、先進装備もついておらず、「野暮ったくてカッコ悪い」と映るかもしれない。しかし走りの素性は、間違いなくベースグレードのほうが優れている。できることならば、実際は16インチサイズなのに、18インチサイズのように見えるホイールデザインが登場してほしいと思う。
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