エンジンの気持ちよさは決して排気量が大きいからいい!という訳ではない。人間がエンジンを評価する時にどこを見ているのか? そして国産車でエンジンの気持ちよさが味わえるクルマ8台をご紹介する。
※本稿は2023年9月のものです
文/清水草一、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2023年10月26日号
■我々が感じる「エンジンの気持ちよさ」とは何か?
エンジンの気持ちよさは、第一に加速感(減速感もアリ)だ。EVの加速が気持ちよく感じるのは、アクセルの踏み込み量に比例、あるいはそれ以上にリニアかつ素早く速度が増す(&減じる)から。エンジンパワーの大きいクルマも概ねそういうことだ。
これは、「もっと強くなりたい」という人間の本能に基づいている。自分の力が増幅されると、自動的に気持ちいいのである。人は電動アシスト自転車に乗っても気持ちよさを感じる。ましてやクルマをや!
ただ、加速感にはいろいろあって、EVみたいな停止状態からドンと加速するタイプや、逆に回転が高まるにつれてパワーが炸裂するタイプまでさまざまだ。それらは加速の味わいの部分で、しょうゆ味やみそ味みたいなもの。
■加速感のほかに重要な要素は?
もうひとつの大きな要素は、体に伝わる音と振動だ。音とは空気の振動。人間は音についてとても繊細な感性を持っていて、人の声でも「気持ちいい……」からジャイアンの歌まで千差万別。自然と涙が流れてしまう天使のような美声もある。
耳に心地よい音は、自然界の音同様、微妙なゆらぎ(ビブラート)があるものだと言われている。内燃エンジンは連続的な爆発が音となって伝わるわけで、管楽器(人間の声帯もその一種)に近い。心地よいビブラートがかかればベストだ。
とは言うものの、モーターの「ヒュイ~~~ン」という回転音にも快感はあるし、歌声がぜんぜん聞こえない静かさもまた、快適と感じたりもする。ブルブルという振動についても、音同様、多様な好みが存在するわけですね。
エンジンの気持ちよさは、こういったいろいろな要素の組み合わせだ。ひと口では言えない個性なのである。
●トヨタ ヤリス(1.5ガソリン)
ベーシックなエンジンでありながら、6MTを通じて回転と速度が上昇する時の音と振動のビブラートが「えっ!?」と思うほど気持ちよかったりする。パワーは大きくないけど、回転の上昇がスムーズ。3気筒、イイネ!
●ホンダ シビックe:HEV
まず、ホンダの2L自然吸気エンジンのフィールが素晴らしく気持ちイイ。これは音と振動がもたらすもの。一方加速感は電気モーターがもたらすもので、自分の意志より少しだけ多めに加速する快感がある。
●トヨタ ヴェルファイア(2.4ターボ)
加速感もまずまずイイけれど、4気筒ターボにビブラートがいい感じでかかる。8ATとの相性もイイ。「ミニバンなのにエンジンが気持ちイイ!」という意外性や、アクセルを踏んでいっても安定しているシャシーも関係アリ。
●日産 フェアレディZ
騒音規制クリアのためほとんど無音に近いのに、ZのV6ツインターボ(VR30DETT型)が気持ちいいのは、ほぼ加速感によるものだ。V6ターボとしては高回転型で、6400rpmで最大出力を発揮する。トップエンドまで突き抜けるぜ!
●スズキ スイフトスポーツ
これぞダウンサイジングターボの快感です。アクセルを踏むと即座にタービンが回って、小排気量とは思えないトルクで加速が始まる。それが快感! スイスポのエンジンは上まで引っ張ってもあんまり元気は出ないけど、日常的に快感が楽しめる。
●スバル WRX S4
2.4Lという排気量が生む余裕のパワー&トルクに加えて、水平対向のスムーズさ、そして何よりも電光石火の疑似シフトアップを繰り出すCVTのスバルパフォーマンストランスミッション(SPT)が、快感の増幅に多大な貢献をしている。
●日産 ノートオーラ
e-POWERは電気モーターで加速する。EV同様、ドンとトルクが出て加速が始まるのが単純に気持ちイイ。オーラはノーマルよりパワーもあってさらにイイ。エンジンが黒子に徹していて静かになったのもプラス。
●マツダ CX-60
何しろ今や世界的に希少種の直6ですからね。直6ならではのスムーズな回転フィールと、ディーゼルのほのかな振動のハーモニーが、ジェントルかつ力強い快感を醸し出す。直6ディーゼルはマジで侮れない。
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