「フォグランプ」といえば、映画「私をスキーに連れてって(1987年)」で活躍したセリカGT-FOURやカローラIIに付いていたPIAA製のフォグランプや、「頭文字D」に登場したAE86の角型イエローフォグなど、かつては黄色が当たり前だったが、昨今はそのほとんどが白色。黄色のフォグランプは、あまり見かけなくなった。フォグランプは、なぜ黄色から白になったのか。フォグランプの役割を振り返りながら、黄色のフォグランプが激減した理由とフォグランプの最新事情をご紹介しよう。
文:吉川賢一
アイキャッチ画像:Adobe Stock_ Aleksandr Kondratov
写真:TOYOTA、Adobe Stock、写真AC
白よりも黄色のほうが、圧倒的に見えやすい
フォグランプは、その名のとおり、霧(フォグ)や吹雪などで前方視界が悪いときに、ヘッドライトの補助として使うもの。このフォグランプの装着は、保安基準で、「自動車の前面には、前部霧灯を備えることができる」(第33条第1項)とされており、義務ではなく任意となる。ただ、冬に雪の多い地域で運転中にホワイトアウトに出くわしてしまったときなど、取り付け位置が低く、照射角も広くなるように設計されているフォグランプは、路肩や道路の凹凸を見えやすくしたり、周囲に自車の存在を知らせるなど、安全確保のために役立つアイテムだ。
このフォグランプの色については、「白色または淡黄色、全てが同一のものであること」と規定されており、保安基準上は白でも問題ない。ただ、白い色のフォグランプだと、霧の水分や雪などにライトの光が吸収&乱反射してしまい、遠くまで光が届きにくく、ましてや、昨今増えている爆光タイプのランプでは、あたりは真っ白になり、視界が遮られてしまう。
これに比べて、黄色は水滴や水分を透過しやすく視界が確保しやすい特徴があるため、霧や降雪といった悪天候の中では、黄色い色味のフォグランプが圧倒的に見えやすい。実用性を考えたら、黄色フォグランプの一択なはずだ。
そもそもあまり必要のない人も多く、ファッション性を優先して白色に
ただ昨今は、ファッション性を優先して、白のLEDフォグランプが採用されている。SUVやミニバンに多い、流行のギラギラフェイスには、白色LEDのフォグランプのほうが似合うし、白くて強いライトは、クルマのフロントフェイスを引き締めて、スタイリッシュな雰囲気になる。
実用的には黄色一択ではあるものの、黄色ライトは古くさく、どこか哀愁漂うイメージがあるし、市街地、特に都心部に住む人たちのなかには、黄色にしたところで、霧が出やすい山間部に行く機会がほぼない、という人も多いだろう。黄色いフォグランプが実用的だとわかっていても、使う機会はほぼないと考えるならば、おしゃれな白を選ぶのも無理はない。実際、自動車メーカーのカタログでも、フォグランプの色味は白色LEDだ。
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