■仲間がいるからこそ可能なモノグレードという立ち位置
1グレード販売が成功する裏側には、兄弟車やシリーズがある。同種のクルマの存在は大きい。
例えば前述のエスクァイア。ノア・ヴォクシーと同じことをしてはエスクァイアの立ち位置が不明瞭になる。
買いやすいミニバンをご所望なら、グレード展開の多いノア・ヴォクシーを買ってもらえばいいのだ。エスクァイアは兄弟車とは違う道を歩むことができるため、思い切った1グレード販売が可能になった。
クラウンスポーツにとっては、クラウンシリーズが、モノグレード化に踏み切れた理由となるだろう。4タイプに分かれたクラウンは、ファミリーとして手を取り合う部分もあるが、それぞれが個性を出す面を単一車種より強くできる。
クラウンとしての立ち位置があるものの、スポーツはスポーツでなくてはならない。クロスオーバーやエステートとは異なるマーケットで活躍する必要があるのだ。
シリーズや兄弟車が支える中で、モノグレード化されたクルマの個性は際立って強い。この個性だけでもクラウンスポーツは、クラウンシリーズの中で選ぶべき価値のあるクルマになっているのだ。
■意味のあるモノグレード化は今後も続く
今のトヨタラインナップは、系統立てて整理された車種同士が、親戚のようなつながりを持っている。故に、モノグレードの抱えるデメリットが現れにくく、メリットを享受しやすい。
今後もトヨタは、クルマの「個」を際立たせるために1グレード販売を拡大してくはずだ。
また、販売目線で見ても、モノグレードはありがたい。商品内の細かな差を覚える必要がなくなり、販売工数が削減できる。クラウンスポーツは取り扱いやすくなり、売りやすさが上がった。
さらにモノグレード化は、生産ラインにかける負担も少なくなる。この手法が、新車供給不足の現状を、改善するきっかけになるかもしれない。
グレードの差異がないというのは、これまでグレード差になれ親しんできた世代には違和感がある。筆者もその一人だ。ただ、選択肢を広げ、グレード間に差をつけて売ることが、今の正義ではないような気がする。
今後も1グレードだけで販売される車種は増えていくだろう。果てはグレードという概念そのものが、なくなっていくかもしれない。
スーパーデラックスなどの呼称がなくなってしまうのは寂しいが、これが未来を見据えたクルマの在り方なのだろう。
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