2023年10月6日に発売されたクラウンスポーツ。美しいデザインと楽しい走りを追求する、新しいクラウンのスタイルだ。ただ、期待のクラウンスポーツにはグレードが1つしか用意されていない。モノグレードを採用した背景には何があるのか。モノグレード採用の理由を考えていく。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA
■実質的モノグレードがあふれる今のクルマたち
モノグレードで販売を展開するクルマは、国産メーカーではまだまだ少ない。
ただ、中位・下位グレードでは、安全装備が付かない(付けられない)など、必須級の装備を付けようとすると、おのずと最上級グレードしか選べない「実質的モノグレード」と呼びたくなるクルマは多いと言える。
また、法人のリース需要やレンタカー需要などに対応するため、仕方なくベースグレードや中間グレードを残しておく必要のある車種も存在するのだ。
ただ、グレードを下げ廉価にして売る必要がないクルマがラインナップの大多数。その代表例が、今回モノグレード化されたクラウンスポーツとも言える。
充分な市場調査と、ユーザーニーズの把握の上に成り立つのがモノグレード化だ。イニシャルコストの低減や、開発の方向性を定めやすくなるなど、1グレードしか作らない利点は、さまざまある。
■高級車は1グレードで充分?
グレードを多数用意するというのは、それだけ購入想定層が広いということだ。故に、想定ユーザーが広い大衆車には、多くの選択肢が必要となるかもしれない。
しかし、元々購入層が限られている高級車では、1つのグレードで充分という考え方もある。
限られた購入層へ対するモノグレード販売で思い出すのは、高級ミニバンを掲げて登場したエスクァイアだ。
もともとはXiとGiという2つのグレードで登場したものの、2020年にグレード体系を縮小する。上級グレードのGiが残り、そこからパワートレインと乗車人数の選択肢が用意されようになったのだ。
エスクァイアはメーカーオプションの選択肢も少なく、今のクラウンスポーツの売り方によく似ている。
高級車という位置づけが定まれば定まるほど、モノグレード化はしやすい。
グレードが少なく選択肢がないというのは、購入者からするとデメリットに感じる部分もあるのだが、選択肢が狭まる分、自身のマーケットに対する働きかけを強くすることができる。
1グレード販売は、高級車に限って言うと、メリットの方が目立つ販売方法だ。
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