■ネガキャンはなにかと不都合も多い
というわけで、ネガキャンが走行性能を高める重要な武器だということがわかった。しかし街中を走るクルマを眺めてみても、ハの字になるほどネガティブキャンバーを付けたクルマはほとんどいない。なぜか。ネガキャンにすると、いろいろと弊害があるからだ。
もっとも大きな理由は、タイヤの偏摩耗(一部だけがすり減ること)だろう。前述した通り、ネガキャンは基本タイヤをハの字にして走る。だからタイヤの接地面内側だけが極端に減ってしまい、タイヤが長持ちしないのだ。
轍などにハンドルを取られやすいということも挙げられる。
私事で恐縮だが、筆者は昔、中古のランチア・デルタに乗っていた。このクルマのネガキャンは有名で、轍をやりすごすときは冷や汗ものだった。ステアリングをしっかり握っていないと、ぐわっとハンドルを取られるのだ。
タイヤの偏摩耗もものすごく、だいたい走行5000~7000kmでトレッド面内側がダメになり、交換していたことを思い出す。
これ以外にもネガキャンは、乗り心地を悪化させたり、操舵系に負荷をかけるといった悪影響を生む。いっぽうサスペンションの進化も見逃せない。ネガキャンの代わりに、コーナリング中でもタイヤをしっかり接地させられるような足回りが誕生したのだ。
■廃れるはずのネガキャンがなぜ今も人気なのか?
結果ネガキャンは古い技術となり、世間から忘れ去られる……はずだった。
しかし冒頭でも述べたとおり、現在でもドリ車やヤン車はネガキャンが鉄則。ものすごいハの字のクルマは「鬼キャン」ともいい、スタンス系と呼ばれるカー・カスタマイジングの中でも書かせぬドレスアップ手法である。
なんでか。これはもう「ネガキャンが底知れずカッコいいから」としかいいようがない。
おそらく人間は、太古の昔から山や樹木の形を見て、大地に踏ん張る台形を「安心のフォルム」として遺伝子に刻み込んだのだろう。その安心感はやがてカッコよさになり、現在のクルマ界にあっても、しびれるスタイリングとして生きているのだ。
実際カーデザインの世界でも、「台形」によって踏ん張り感を出すことは常識だ。ドリ車やヤン車があらゆる不都合に目をつぶってタイヤをハの字にキメるのも、人類の持つ深い記憶のなせる業なのかもしれない(大げさ)。
【画像ギャラリー】人間に刻まれた美意識ともいえるハの字タイヤを見て! (4枚)画像ギャラリー
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