もはや絶滅寸前ではあるものの、いまだに根強いファンが多いマニュアルミッションのクルマ=MT車。スポーティさや商用車での実用性がMT車を選ぶ理由となることが多いが、安全性の面でもそのメリットは大きいという。
文/井澤利昭、写真/写真AC
【画像ギャラリー】ちょっと難しいマニュアル車のほうが安心!?(9枚)画像ギャラリー■MT車は意外と安全!? その事故率はAT車の半分という報告も
国内を走るクルマの実に98%がAT車であるといわれる現代。それを反映するかのように、新型車では一部のスポーツモデルやトラックなどの商用車を除き、マニュアルミッションのモデルが用意されることはかなり少なくなってきている。
かつては、シフト操作を伴うスポーティな走りや燃費面でのメリットがあるといわれていたMT車ではあるが、技術的な進化によって、長所とされるそれらのポイントですら、今やAT車に軍配があがるケースすらある。
もはやAT車と比べてMT車にはメリットはないのか……とMT車好きの人は落胆するかもしれないが、MT車にはもうひとつ、AT車と比較して大きなメリットがあるとされている。
それがクルマ好きの間では昔からよく言われている、AT車と比べてMT車のほうが事故を起こす確率が低く、安全性が高いとされている点だ。
平成12年(2000年)頃とやや古いデータではあるものの、鳥取環境大学・情報システム学科が調査、公開しているAT車とMT車の事故率を比較した資料によると、すべてにおいてはAT車のほうが高く、「右左折時」や「出会い頭の衝突」、「追突」では、AT車はMT車と比較してほぼ2倍という高い事故率を記録しているというのだ。
高度な安全装備が備わる現代のクルマでは少々事情は変わってくるかもしれないが、今もなお、まことしやかに語られる「MT車の安全性の面でアドバンテージ」とは、具体的にはどんな点なのだろうか。
■踏み間違い事故が起こりにくい!? MT車の構造が安全にも寄与する理由
一時は社会問題ともなり、今なお発生のニュースを見聞きすることが多いアクセルとブレーキの踏み間違いによる暴走は、AT車の構造がその原因といわれる事故のひとつだ。
高齢者ならずとも、誰もがその加害者になる可能性があり、場合によっては悲惨な結果を生んでしまうこともある踏み間違いによる事故だが、MT車ではその踏み間違いによる急発進が、構造上起こりづらいとされている。
AT車は、クルマを発進させる際、ブレーキペダルから足を離し、アクセルを踏み込むだけで走り出すことができる。
いっぽう、MT車はクラッチペダルを踏んで駆動をカットし、アクセルペダルを踏んで徐々にエンジンの回転数を上げながらクラッチペダルを戻して駆動をつなげなくては走り出すことができない。
こうしたやや複雑な手順を踏む必要があるMT車では、意図しない急発進をした場合でも、エンストやクラッチペダルを踏み込むことで、AT車のような暴走を防ぐことができる。
最近では、意図しない急発進を防ぐ「誤発進抑制機能」を備えるAT車も増えてきてはいるが、2021年から義務化が進んでいる「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)」とは異なり、すべてのクルマに搭載されているわけではないため、構造的に踏み間違いが起きにくいMT車は、安全面での安心感はより高い。
かつてはMT車との相性が悪いとされてきた「衝突被害軽減ブレーキ」などの安全装備も、義務化や技術の進歩によって新型車では導入が進んできており、構造上の利点とあわせ、MT車の安全性をさらに高めてくれるメリットとなっている。
また、エンジンブレーキを使用しやすいことから長い下り坂が続く峠道などでの減速を含めたスピードコントロールがしやすく、フットブレーキの踏みすぎによって発生する「フェード現象」や「べーパーロック現象」を防ぐことができるのも大きな利点でもある。
ブレーキのトラブルは即事故につながるだけに、これもMT車の安全面でのメリットと考えていいだろう。
コメント
コメントの使い方踏み間違い事故を防止する(減らす)には、マニュアル限定免許を導入して高齢者で車を運転し続けたい人はこの免許しか取れないようにすればいいように思う。
もちろんシフト・クラッチ操作できないなら返納でしょう。
スマホを見ながらの「ながら運転」は、オートマ車であれば右手はハンドル左手はスマホってことが可能ですが、マニュアル車であればシフト操作があるため少なくともオートマ車よりは少ないはずです。
ドライバー本人の問題であってMT車がどうこうじゃないと思う。MT乗りだって運転中スマホ見る人は見る