今や壊滅的な状況にある国産セダン市場だが、バブル時代は黄金期にあり、個性的なセダンたちが無数に存在した。そのなかでも輝きを放っていたのがエレガントなシルエットを持つ4ドアハードトップだった。第10回目となる日産ヘリテージ連載はバブル期に宿敵マークIIに果敢に挑んだ6代目ローレル(C33型)を紹介したい。
文/大音安弘、写真/池之平昌信、日産
【画像ギャラリー】今見てもそのスタイルはエレガント……日産C33型「ローレル」は宿敵のトヨタマークIIに迫った!!(10枚)画像ギャラリー■4ドアHT一本となったC33ローレル
歴代6代目となるC33型日産ローレルは1988年(昭和63年)12月に発表された。その位置づけを知るためにも、少しだけローレルの歴史を振り返ろう。
1968年3月に発表された初代は、個人ユーザーをメインとした日本初のハイオーナーサルーンであった。これは当時の小型車ユーザーの高級志向が強まったことが背景にある。トヨタも同様な需要に目を付けており、同年9月に初代マークIIとなる「コロナマークII」を投入しているが、そのパイオニアはローレルだったのだ。
6代目モデルには新たに若者向けのスポーティセダン、初代セフィーロが仲間入りすることが決定していたため、伝統的キャラクターであるハイオーナーカーとしての原点が見直された。
その開発コンセプトは、「社会的地位を確立した行動的な大人のカーライフを想定し、大人の趣味のよさを表現した上質なサルーン」としている。このため、ボディタイプはスタイリッシュな4ドアハードトップに一本化。さらに開放感にあふれるセンターピラーレス構造とした。
■エレガントさを重視した内外装のデザイン
内外装デザインは従来の高級サルーンらしい重厚さを薄め、エレガントさが重視された。その開発を指揮したのは当時の日産では初のデザイナー出身となる開発主査であった。
エクステリアはスマートなデザインながら、全体的に丸みを与えることで柔らかな印象を与えつつ、ベルトラインの位置を高め、さらに全高を15mm落とすことでキャビンをコンパクトに見せることに成功。スポーティな4ドアハードトップらしいシルエットを構築していた。
柔らかなタッチのデザインとし、心地よさと上質さを大切にしたインテリアは、基本的にはセフィーロと共有部分が多いものの、ダッシュボードに本木目及び漆塗り調のクラスターパネルとアンティークスタイルのアナログ時計を加えることで差別化を図っていた。
高級車としての新たな世界観を提案したのが、新上級仕様「クラブS」と「クラブL」の設定だ。スポーティ路線の「クラブS」のエクステリアでは、ブラックアウトしたフロントグリルとスポイラー付きフロントバンパー、ゴールド仕上げのアルミホイール、サイドのピンストライプを採用。ボンネットマスコットもレス仕様とした。
インテリアは高級素材のエクセーヌ素材のシートや本木目クラスター、本革巻きステアリングなどを標準化。さらにメカニズムでは走行性能を高めるべく、電子制御の四輪操舵機構である「ハイキャスII」やリアビスカスLSDなどを備えていた。
一方、クラブLは初期型だとターボエンジンのみの最上級グレードとして設定。最大の特徴はホワイトベージュのレザーシートをはじめとした豪華な装備にある。快適機能としては、ASCD(※クルーズコントロールのこと)や電子制御アクティブサウンドシステムに加え、DUET-SS、4WAS(※ABSのこと)、リアビスカスLSDなどを標準化していた。
ちなみに、DUET-SSはソナーセンサーで読み取った路面状況を合わせて減衰力を調整するスーパーソニックサスペンションと電子制御パワーステアリングを組み合わせたものである。
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