■デザインのよさが復活を呼び起こした?(TEXT/石川真禧照)
ジャガー&ランドローバーに限らず、英国の自動車メーカーの経営、クルマ作りに関してのしたたかさは、かなりのものだ。それは相手がどんなに大物であろうと、こちらがいかに不利であろうとも関係ない。堂々と自分を主張する。
例えばジャガーは以前、フォードのプレミアムオートモーティブグループ(PAG)に入っていた。ランドローバーも同じだった。当然、フォードは自社製品を使ったクルマ作りを要求した。コストダウンも要求してきた。でなければグループ化した意味がないからだ。
リンカーンをベースにSタイプというクラシカルな外観のセダンが作られた。しかしデビューしたSタイプのスタイルは1960年代のジャガーセダンのイメージで評判だったが、インテリアなどはかなりチープでガッカリさせられた。
しかし、どうやらそれはジャガーの作戦だった。つまり「あれだけの予算で作れというからこのレベルしかできません。もっといいものを作りたかったらもっと予算をくれないと」、というアピールだった。
仕方なくフォードがさらに開発予算を出すと、インテリアにもクオリティのあるSタイプをマイナーチェンジで出した。その後、スポーツタイプのRなども加えるなど、フォードから次々とお金を引き出し、新しいクルマ作りに着手した。
という話の真偽を2012年12月に行なわれたランドローバーフリーランダー2の新型車海外プレス試乗会のパーティで、ジャガー広報のボスに聞いた。さすがに「そのとおり」とは言わなかったが、「あれはたまたま運がよかっただけ」と話を巧みにはぐらかし確答をさけていた。
そのジャガー&ランドローバーは、フォード製の2L直4ターボをイヴォークやフリーランダー2どころか、ジャガーも2013年モデルから、最上級セダンのXJ、アッパーミドルクラスのXFにも同じエンジンを追加。
新型レンジローバーも車両重量の大幅な軽減など、軽量化技術をしっかりと開発し、実用化している。その費用だってタタが出している。もちろん、それにはある程度の結果を残さなければならない。
デザインにおいても、かなりの自由度が与えられていると思う。
イヴォークを手がけたランドローバーのデザインダイレクターのジェリー・マクガバン。フォード、アストンマーチンからジャガーに移りXK、XF、XJ、2013年中に発売されるジャガーの新世代スポーツカー、Fタイプを手がけたイアン・カラム。
2人ともタタ傘下に入ってからジャガー&ランドローバーに入社したわけではないが、とにかくデザインが飛び抜けている。この2人が、新生ジャガー&ランドローバー躍進の原動力になっているのは間違いない。
お金は出すが口は出さないタタの懐の深さと、フォード製のエンジンを高級車まで利用するしたたかさ。そしてデザイン。これが元気の理由なのだろう。
■結論
両メーカーとも「お金は出すが口は出さない」作戦が大成功!
【画像ギャラリー】やっぱり余計な口出しはしないのが一番なのかな……!? 復活に成功したボルボ、ジャガー&ランドローバーの画像を見る(10枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方