フォード傘下だったボルボとジャガー&ランドローバー。買収した相手はボルボが中国の吉利汽車、ジャガー&ランドローバーがインドのタタモーターズ。両社ともそれぞれの傘下に入った後、たった数年で復活!
中国、インドに買収されるとなぜ元気になるのか迫ってみたい。(本稿は「ベストカー」2013年1月26日号に掲載した記事の再録版となります)
TEXT/石川真禧照、編集部
PHOTO /ボルボ、ジャガー&ランドローバー
■めざましい躍進を遂げるボルボ いったい何があったのか?
2010年3月、ボルボは中国の民族系自動車メーカー、吉利汽車(GEELY AUTOMOBILE)の親会社、浙江吉利控股集団(GEELYホールディンググループ)に18億ドル(約1700億円)で買収された。
買収に際し、フォードはボルボへの部品供給を継続し、欧米に加え、中国をはじめとする新興国市場での販売拡大を目指し、スウェーデンの本社機能も維持するとした。
GEELYホールディングの李書福会長は「ボルボを買収した後、スウェーデンの本社に吉利から多数の管理職を送り込むつもりはない。むしろ中堅クラスの人材を派遣して、ボルボの技術やマネジメントから学ばせたい」と発言。
さてGEELYに買収された後、ボルボは何が変わったのか?
まず社長兼CEOが、ステファン・ヤコビー氏から2012年10月、大手トラックメーカーのMAN出身で2010年からボルボの取締役を務めてきたホーカン・サムエルソン氏に交代。GEELY傘下後初めてのトップ交代となった。
富裕層向けに大型車を供給する体制をとりたい李書福会長に対し、エコという世界のトレンドに逆行すると意見が対立したらしい。
肝心の経営体質の改善については、傘下に入った後の最初の有価証券報告書を見ると、2011年の通期決算では売上高は1225億255万クローナ(約1兆4700億円)。前年の1131億クローナに対して、11%増加した。
いっぽう、税引き前利益は16億4600万クローナ(約190億円)。前年の23億4000万クローナに対して、30%の減益となった。減益の要因について、ボルボカーズは「研究開発への投資、工場の拡張や新型車の開発などにかかるコストが増えたため」とした。
2011年の世界新車販売台数は44万9254台で、前年比20.3%増を達成。地域別では、中国が54.4%増と大躍進。米国も24.7%増、欧州も10%増と伸びた。XC90やS60、V60の好調によって、見事に復活を遂げたのだ。しかし皮肉なことにS60やV60はフォード時代に開発されたものだ。
2012年上半期は売上高653億クローナ(約7627億円)、前年同期の629億クローナに対し3.9%の増加にとどまった。
税引き前利益(EBIT)は前年同期の15億2900億クローナに対し84%の大幅な減益。減益の理由は研究開発への投資、工場の拡張や新型車の開発などにかかるコストが増えたためとしている。
2012年1~11月の世界新車販売台数は38万3396台と前年同期の6%減。C30、S40、V50の生産終了が響いたが、新型V40を発売したので、2012年下半期は上向くと予想している。
GEELYホールディング傘下に入った後、ボルボが元気になった理由のひとつに研究開発費の増加が挙げられる。2011年には4184万クローナ(約527億円)、2012年上半期には2227万クローナ(約280億円)の研究開発費を投じているが、2011~2015年の間に、約110億ドル(9000億円)の投資を実施するとしている。
他車種への応用が可能な次世代シャーシのSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)、と燃焼効率に優れる完全新設計の4気筒エンジンファミリー・VEA(ボルボ・エンジン・アーキテクチャー)の開発を進め、投資の約半分がインフラ整備に充てられるという。
いっぽう、第2の祖国といえる中国では2015年までに新車販売台数を年間20万台に拡大するため、2013年には四川省成都に新工場を建設するほか、上海市や黒龍江省大慶市の計3カ所の新工場を建設し、年産20万台体制とする計画を立てている。
また2020年までに80万台を販売するという野心的な計画を立てていることにも驚く。
日本でも販売台数を急速に伸ばした。1990年代後半には、日本国内で年間2万台以上を販売したボルボだったが、2000年以降は徐々に販売台数を減らし、2009年には6358台にまで大きく落ち込んだ。
しかしこれ以降、わずか2年間でV字回復を遂げ、2011年には前年比約52%増となる1万1787台を記録。その牽引役となっているのはV60やS60、XC60だ。
2012年1~11月の販売台数ではS60が1643台、V60が4011台を販売。前年同期比25.1%増となり、年間1万台以上を売るプレミアム輸入車ブランドの中で、伸び率トップとして快走を続けている。
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