街中を走っていると、いまだにブレーキダストが付いて真っ黒になっている輸入車をいまだに見かける。排ガス規制、燃費規制がこれだけ進んでいるのに、なぜブレーキダストが少ないブレーキに替えられないのか?
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、Adobe Stock
■環境問題が叫ばれる現代になっても真っ黒なブレーキダストはどうなの?
信号待ちで右のクルマに目をやると、ホイールが真っ黒になっているクルマをよく見かける。これはブレーキパッドがローターによって削れたカス(ブレーキダスト)がホイールに付着することによって起こる。特に欧州車に多い。
国産車のホイールにはうっすらと付く程度だが、なぜ欧州車のブレーキダストは大量に出るのだろうか?
欧州と日本では交通事情、道路環境が異なるため、ブレーキの材質が違う。ストップ・ゴーなどの低速域が多く、高速道路の最高速度も120km/hという日本では、耐摩耗性に優れた材質のNAO材(ノンアスベストオーガニック)のブレーキパッドを使用しているクルマがほとんどだ。
NAO材は、耐久性に優れ、ブレーキダストやブレーキ鳴きが少ないというメリットがある。
いっぽう、欧州車は速度無制限の高速道路「アウトバーン」や郊外の一般道でも制限速度100㎞/hは珍しくなく、日常的に速度域が高いため、耐摩耗性よりも絶対的な制動力が求められる。
したがってブレーキ性能に優れたロースチール材が主流となっている。しかし、このロースチール材のブレーキパッドはブレーキが効くいっぽうで、鉄繊維の含有量が多く含まれるため、ブレーキダストも多い。
メルセデスベンツやBMWなど欧州車に純正採用されているブレーキパッドの材質はロースチール(メタル系)のパッドで、NAO材にスチール成分が10~30%配合されており、高速域での使用を考慮した設計となっている。耐熱性が高く、効きがいいぶん、ダストが多いのだ。
そういえばGRヤリスがサーキット走行を想定し、耐熱性や効きを重視したメタル系ブレーキパッドを採用したのが記憶に新しい。
■2025年7月からユーロ7のブレーキダスト規制が始まるため状況は一変する!?
ブレーキダストの少ない欧州車用のブレーキパッドはないのかを思っている人人も多いだろう。国内のブレーキパッドメーカーではダストの少ない「プレミアム」や「コンフォート」と名付けられた低ダストパッドが販売されている。
例えばディクセルのストリート用ダスト超低減パッドMタイプはNAO材で、ローターの攻撃性が驚くほど低く、ローターのロングライフ化に貢献しているほか、ストッピングパワーを犠牲にすることなくダストは大幅に低減。
ただし、純正以外のパッドを使用すると、一部のディーラーでは保証やアフターサービスを受けられない可能性があるため注意が必要だ。
しかし、純正品のブレーキパッドの状況も変わりつつある。というのも欧州委員会が提案した新たな環境規制「ユーロ7」のなかで、注目を集めているのはブレーキダスト規制だ。
ブレーキダスト規制は2025年7月と2035年1月の2段階で強まっていき、2025年7月の規制では10マイクロメートルの粒子状物質(PM)が1kmに付き7mmg、2025年1月から1km3mmgに定められた。
この規制によって輸入車メーカーの純正ブレーキパッドのブレーキダストは減っていくだろう。これまでのロースチール材から、低ダストかつ制動性能、耐久性に優れるNAO材が主流となっていくと思われる。
曙ブレーキやアドヴィックス、日清紡ブレーキなど日本のブレーキメーカー各社はこのユーロ7のブレーキダスト規制に対応し、この規制値をクリアするNAO材を開発しているので2025年の規制が始まる前には市販されているはずだ。
いつの日か、ブレーキダストクリーナーを使って地道にこびりついたブレーキダストを落とす作業がなくなる日が来るのか、期待して待ちたい。
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