海中に潜む脅威の「機雷」。地味だがとてつもなくやっかいなヤツ

海中に潜む脅威の「機雷」。地味だがとてつもなくやっかいなヤツ

 『沈黙の艦隊 シーズン1』の公開が始まった。ドラマでは潜水艦同士の戦闘や水上艦艇とかけひきなどが楽しみだ。ところで、こうした潜水艦や水上艦にとって、とてつもなくやっかいな敵の一つに「機雷」がある。ひたすら獲物を待ち、通過すると爆発して沈めてしまう。さまざまな兵器のなかでは、地味な存在だが、その威力はとてつもなく大きく厄介だ。日本では薩英戦争(1862年)の頃より機雷が使用された記録がある。今回は、現代の機雷戦について紹介する。

文・イラスト/坂本 明、写真/海上自衛隊(メイン写真=掃海艇「えのしま」)、韓国海軍

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■見つけるが難しいヤバイ敵

 機雷は、侵攻してくる艦船などを破壊し、その行動を妨害するのには非常に効果的な武器といえる。

 そもそも機雷は発見や除去が難しく、機雷が1個でも発見されたならば安全のためにその海域を掃海作業しなければならないからだ。しかも、機雷は安価で大量調達が可能で、係維機雷(機雷の種類については後述する)のような古い形式のものであっても接触して爆発すれば喫水線下の船体を大きく破損し浸水を伴う破壊をもたらすのである。

 さらに厄介なのは安価なため、ならず者国家と呼ばれているような国やそれに支援されたテロリストでも調達して、船舶が頻繁に通るような海域に敷設することが可能なことだ。

 ところで水中で爆発して艦艇を破壊する兵器には魚雷と機雷があるが、これらはまとめて「水雷」と呼ばれる。魚雷が動的な攻撃兵器であるとすれば、機雷は静的な攻撃兵器といえる。

 機雷に関わる作戦を機雷戦といい、機雷戦には敷設された機雷を探知・除去する掃海作業を行い、船の安全を守ったり航行の安全を確保するための対機雷戦と、海峡や特定海域での敵の艦艇の航行を妨害したり味方の航路などを防御するために機雷を敷設する機雷敷設戦がある。

■さまざまな仕掛け方がある機雷

 ひとくちに機雷といってもさまざまな種類があり、作動(起爆)方式や敷設状態、敷設方法などで分類される。本稿では敷設状態で分類してみる。

(1)係留機雷……炸薬および信管を入れた機雷本体(缶体)をケーブルで海底に定着させたアンカーに固定する方式。機雷本体はわずかに海面に出ていたり、海中に浮いている。アンカー式機雷や、アンテナを増加して敵船舶が接触する確立を高めたアンテナ式機雷などがあり、いずれも触手に船が触れると爆発する。深さが750m未満の水域ならばどこでも敷設できる。

(2)短係止機雷……普段は海底近くにアンカーとケーブルで固定されており、目標が発する磁気や音などのシグニチャーをセンサーが感知すると、ケーブルが切断され、機雷本体が上昇し所定の深度で爆発する短係止機雷と、固定された容器から魚雷が飛び出して磁気源や音源をたどり命中・爆発するホーミング機雷がある。これらの機雷は潜水艦を攻撃目標としたものが多い。

(3)沈底機雷……目標と直接接触せず、目標の発する磁気や音、機雷の上を通過するときに起きる水圧の変化などをセンサーが感知して作動する方式。このタイプは浮力がないので自重で海底に沈んでおり、シグニチャーを感知すると作動爆発する。通常、水上船舶を目標とした場合は水深60mより浅い海域で使用されることが多い。

 また現代の短係止機雷や沈底機雷では、磁気+音響、磁気+水圧というように起爆条件が組み合わされた複合感応機雷になっている。

 これらの他に固定されておらず、海面を漂う浮遊機雷というのもある。これにはケーブルが切れた係留機雷も含まれている。

 機雷の多くは敷設してしまうと管制できないが、なかには敷設してから平時には機雷のセンサーで船舶情報を集め、有事には機雷として使用できる管制機雷というものもある。

次ページは : ■対機雷戦の主力となる掃海艇とは

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