海中に潜む脅威の「機雷」。地味だがとてつもなくやっかいなヤツ

■対機雷戦の主力となる掃海艇とは

　機雷の掃海を行うための軍艦を掃海艇といい、他の艦とは異なる特殊な構造を持つ。まず喫水を浅くすることで機雷に接近しても機雷を作動させず、水圧感応型に対しては航行する際に発生する水圧を少なくして機雷が感応しにくくなっている。

　また磁気に感応する機雷に対しては船体構造が磁気を帯びない素材で造られている。たとえば海上自衛隊の「ひらしま型」までの掃海艇は船体構造が木製だし、アメリカ海軍の「アベンジャー級」掃海艇では木材にFRPコーティングを施して強化した船体を使っている。また「ひらしま型」次級の「えのしま型」のように船体構造を繊維強化プラスチックにした掃海艇もある。

　掃海艇に搭載される主機はディーゼルエンジンだが、船体同様に非磁化が求められるため、非磁性材料を多用して造られているのも特徴のひとつだ。

　さらに補助電動機を搭載して電動推進方式を併用している艦が多い。作業によっては長時間の低速航行が必要になるためと、電気推進方式にすると船体から発生する雑音を低減できるという効果もあり、機雷掃討や掃海任務時には機関をディーゼルから電気推進に切り替える。

　当然ながらエンジンや電動機、関連装置は音響機雷に対処するために防振対策が施され、外部へ振動が伝わらないようになっている。

　機雷を無力化するために掃海艇が搭載している装備は機雷探知機、精密航法装置、機雷処分具などである。

■掃海艇に搭載される装備と掃海作業

　機雷探知装置は掃海艇の船底に設置されたソナーや曳航式のソナーで、高周波のアクティブ・ソナーが使われる。これにより海底に置かれている沈底機雷なども細かく探知できる。

　精密航法装置は探知した目標の位置を正確に記録するもので、艦位と機雷の位置を高精度にわりだして記録することで、そのデータが機雷処分装置に入力され処分具は適切に誘導されて機雷を処分できるのである。

　処分具は実際に機雷を処理するための道具で、沈降器のような係維式掃海具や磁気掃海具、音響掃海具などがあり、いづれも掃海艇により曳航・使用される。

　係維式掃海具（切断器付き掃海具）は主に係留機雷を処分するためのもので、掃海艇の曳航する掃海索に取り付けた切断装置で機雷のケーブルを切断し、海面に浮上した機雷本体を爆破させて処分する。パラヴェーンと呼ばれる翼の付いた飛行機のような展開器も係維式掃海具のひとつ。

　磁気感知式や音響感知式の機雷の処分には専用の掃海具が使われる。専用の掃海具で船が機雷の近くを通ったように欺瞞して機雷を自爆させるので感応掃海と呼ばれる。

　ちなみに掃海具を曳航して機雷を浮上・起爆させる方法を機雷掃討、機雷探知装置を使用して機雷を探知・処分する方法を機雷掃海という。

■機雷処理にもロボットが活躍

　近年では水中ロボットの発達により、ロボットを使用して探知から処分までを行なう方法も一般的になっている。ロボットは機雷の作動方式に関係なく掃海作業が行えるというメリットがあり、作業中に機雷が爆発しても処理作業を行う人員が死傷する可能性がほとんどない点も大きい。

　ロボットを使用した掃海といえば、海自の護衛艦「もがみ型」ではUUV（Unmanned Underwater Vhicle：無人水中航走体）とUSV（Unmanned　Surface Vehicle：無人水上艇）を使用して機雷掃討を行うことがひとつの特徴になっている。

　「もがみ型」は対機雷戦ソナー・システムOQQ-11を装備しており、これにより艦底に装備された対機雷用ソナーを使用して、機雷の危険が及ばない距離から機雷の捜索を行い、発見した機雷の種類を識別。その情報をもとにEMD（Expendable Mine Disposal：自走式機雷処分用弾薬）を使い機雷を処分する。

　これに加えて先に上げたUUVとUSVは水中ネットワークを構成し自立航行を行い、機雷の捜索や識別を行って母艦からの制御によりEMDで機雷を処分することができるのだ。

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