■豊富な資金力をもとにした技術開発力
研究開発というものには基本的にお金がかかる。そのいい例が、最先端の科学研究施設。ヒッグス粒子を追いかけるCERN(欧州合同原子核研究機構)とか、ニュートリノを観測するカミオカンデとか、物理系のノーベル賞はだいたいこういった巨大研究施設から生まれている。
要するに、研究開発というレースに勝ち抜くには、まず何はなくとも巨額の施設建設資金。そのうえで優秀な研究者を集めることが必要なのだ。
この構図は自動車の研究開発でもまったく変わらない。
特に今、自動車業界は100年に一度の変革期と言われていて、内燃機関から電動モーターへの移行という大きな渦の真っ只中。
AIや全固体電池など、これまでとは勝手の違う研究テーマが次々と立ち上がり、とてもじゃないが、いち民間企業の手に負えないスケールに膨れ上がっている。
そんな状況で誰が優位に立つかといえば、まずは資金力の豊かな会社に決まってる。そしてそれは、先日の決算で4兆円超の営業利益を叩き出したトヨタ以外にありえない。
トヨタはCO2削減にはBEV一本やりではなく、さまざまなソリューションが不可欠と主張しているが、この「マルチパスウェイ」という戦略も資金の余裕があればこそ。普通の会社にそんな余裕はなく、有望な研究開発テーマを絞り込んで、そこに集中的に資金を投じるしかない。
もし、ライバルがトヨタに一矢を報いるとすれば、組織より個人の能力がモノを言うソフトウェア領域で、有能な仲間を組織することくらいだ。強力な正規軍にひと泡吹かせるには、やっぱりゲリラ戦しかないと思うんだよねぇ。
(TEXT/鈴木直也)
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