伊藤忠商事は2024年3月6日、ビッグモーターの事業再建に向けて契約を締結したことを発表した。2023年11月に公表していたとおりだが、会社分割方式によってビッグモーターの主要事業を新会社に承継される。今後の見通しなどについて分析した。
文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、AdobeStock
■ビッグモーターの持っていたファシリティは企業にとって魅力的?
修理や車検の不正を発覚に始まった一連のビッグモーター騒ぎが収束しそうな流れになってきた。
大手商社の伊藤忠商事と、投資ファンドのJWP(ジェイ・ウィル・パートナーズ)、伊藤忠商事の子会社で燃料事業などを手がける伊藤忠エネクスの3社で、4月後半をめどに新会社をスタートさせるという。中古車販売の優良店舗や整備工などの社員も引き継ぐようだ。
冷静になって考えてみれば、ビッグモーターのファシリティ(土地や建物、施設)は素晴らしい。ディーラーの立地も広さも整備工場も、既存の大手ディーラーと比べても遜色ない。
そればかりか、すでにビッグモーターのファシリティを居抜きで購入した大手インポーターすら出てきた。看板を掛け替えるだけでいいディーラーになります。そんな店舗が日本中にある。
BYDが日本にディーラーを展開しようとしたら、ファシリティの確保に巨額の投資をしなければならない。街道沿いの土地を見つけたって、そこにディーラーを作るのは大変だ。
■ビッグモーターにいた営業マンの実力は優秀だった
ここ10年、建設現場で働く人がジワジワ減ってきたところに、大阪万博や自然災害でワーカーを持って行かれている。資材も人件費も爆上がり。ディーラーを作る費用は直近で50%以上高騰していると聞く。
ビッグモーターの跡地なら出店コストを大幅に減らせる。伊藤忠商事の場合、「ヤナセ」や、レンタカーやリース事業を行っている東京センチュリーに出資しているし、それこそBYDやヒョンデなど新規参入メーカーを運営することだってありうるだろう。いや、今のビッグモーターを従業員込みでそのまんま引き継いで中古車販売/買い取りを続けてもいい。
あまり評価されていないけれど、ビッグモーターの営業マンの能力は高い。そもそも、今時あんな厳しい会社に残って働いていたこと自体、凄い。成績も残せていたということである。
私は自分のクルマを4台ほど買い取り業者で手放したけれど、3台はビッグモーターだった。熱心だし、高い値を付けてくれるからだ。人材ごと引き継げば、ただちに収益を上げられることだろう。
また、車検などできる「指定工場」の取り消しを受けている工場も、ビッグモーターのままだといかんともしがたいものの、事業主体が変われば新規認可の可能性など出てくる。任意保険だって同じ。
事業主体の変更によって新規契約をすればいいだろう。いずれにしろ従来の経営陣(特に兼重親子)は新体制から外れる。違う企業になると考えるべきかもしれません。
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