本来ならオプションとして別途費用がかかる装備を「標準装備」としてカタログ上に表記したとして消費者庁は2024年3月12日、メルセデスベンツ日本に景品表示法違反(優良誤認)による課徴金12億3097万円の納付を命じた。同法違反での最高額となった背景にはいったい何が?
文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、メルセデスベンツ、AdobeStock
■悪質な不正事案の数々……
メルセデスベンツ日本が12億3097万円の課徴金支払いを命じられたという。最初にこのニュースを聞いた時、ケタをふたつくらい間違えたのかと思った。国内における自動車関連の不正でここまで大きな罰則金額を見た記憶なし!
驚いて消費者庁のWebサイトに行ってチェックしてみたら間違いじゃありませんでした。小さな不祥事には興味のない私ながら気になる。
どれだけ悪いことをやったんだろう? 消費者庁のサイトを読んでいくと、例えば「カタログに標準装備と記載されている装備なのに、実際はメーカーオプションを加えなければ付いていなかった」。
はたまた「スポーツコンフォートサスペンションと記載されているのにノーマルだった」とか「ドリルドベンチレーテッドディスクのはずが普通のブレーキだった」。 「AMGなのでスポーツサスペンションと記載されているのにスポーツコンフォートサスペンションだった」なんてのは完全にユーザーをナメている。
ハンドリングのいいクルマが欲しくてAMGを買うのに、ふつうのメルセデスと同じ”ちょっとスポーティな足回り”だったらどうよ? ADAS関係の装備は、アダプティブクルコン関係が多い。標準装備のはずがオプションを選ばないと付かない、などなど。
はたまたサングラスケースが付いていなかったみたいなショッパい不正もある。車種にもよるが、読み切れないほどたくさんの不正を行っていた。なんでこんなデタラメを行ったのか?
■コロナ禍で世界中が大混乱していた2020~2021年に発生
時期を見ると2020年初から2021年中頃までの間である。メルセデスベンツに対し忖度するなら、このあたり、新型コロナで世界中が大混乱していた。半導体不足も始まっており、これまた混乱中。
メルセデスベンツにかぎらず、ほかのインポーターも「本来なら付いている装備がないんです」とか「部品が到着次第装着します」みたいな状況だった。日本に到着したクルマの装備内容がカタログと違うことなど珍しくもなんともなかったワケです。
この状況にどう対処していたか? どこも正直に説明していましたね。もちろん値引きで対応したりして、金額の帳尻も合わせていた、と思う。
メルセデスベンツ日本は乗り手の素性がしっかりわかっているメディア向けの試乗会ですら、慣習のない免許証の提示を義務づけるほど原理主義。ユーザー対応も厳格にしていたと思ったら、内部はデタラメのユルユルだったワケです。
原理主義でなく利己主義だったようだ。ディーゼルゲートのVWといいメルセデスといい、ドイツのイメージを地に落とす。
■課徴金で課された金額は不正利益の3%分だが
メルセデスベンツ日本、カタログ装備と違うクルマが届いたのを受け、ユーザーをだますような商談をして高いオプションを付けさせていたワケ。しかもメルセデスは素直に不正を認めなかった? じゃなければ消費者庁だってここまで怒らない。
消費者庁、そう簡単に動かないです。フェアレディZは生産可能台数をはるかに超える注文を受けておきながら、契約後一方的な値上げしたってスルーですから。
どれだけメルセデスベンツが悪質なことをやったのか、やがて情報も出てくるだろう。メルセデスベンツ日本の上野社長は就任11年。一般的に雇われ社長で健全な経営ができるのは8年までとも言われる。
ちなみに課徴金の金額は不正で得た利益の3%分とのこと。課徴金額を見ればその酷さがよ~くわかります。今後ユーザーにも還元されるのかどうか気になるところ。ユーザー側から訴訟を起こされたら返金か?
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