ランクル300が納車5年待ち? なんてひと昔前じゃ考えられなかった昨今の新車販売。正直コロナはもう収まって来たんだし、半導体の供給も安定してるしなんで……それはズバリ転売対策だ! アルファードは買った金額の200万円以上で売れることも多々ある。それによって今ディーラーでは、販売制限が起こる事態になっているのだ。
文/佐々木 亘、写真:TOYOTA
■ランクル300から表面化した転売問題
2021年8月にフルモデルチェンジしたランドクルーザー300系。予約注文の段階で、年間生産計画台数の3倍以上の注文が入り、超長納期が確実となった。
この時トヨタは、購入希望者から誓約書をとり、登録日から最低1年以上はクルマを手放さないということを、ユーザーに対し約束させる措置を取っている。
しかし、新型モデル発表から半年が経過した2022年2月頃から、国内の業者オークションに、ランクル300が出回るようになってしまった。
900万円前後で購入したランクルは、オークションで1,700万円~1,800万円前後で取引される。中には2,200万円以上の値が付いたものもあるのだ。
過去にも新型車を業者が挙って買い付け、オークションに流して儲けるという話が無かったわけではない。ただランクル300の登場で、「クルマの転売は、ほぼ確実に儲かる」という風潮が高まってしまった。
以降、トヨタは全国のディーラーと転売の現状を確認し、予防策を講じることで一致している。奇しくもそれは、転売ヤーという言葉が一般化してしまった時代と同時期のことだ。
■プリウス・アルヴェル・ランクル70……狭まっていく販売方法
ランクルの転売問題が表面化して1年後、プリウスがフルモデルチェンジを果たす。納期は2年とも言われ、プリウスも転売が後をたたなかった。
人気モデルなら新車価格よりも高く売れるという転売の旨味がほぼ決定的になり、この半年後に登場するアルファード・ヴェルファイアから、メーカーが転売対策に大きく動き出すこととなる。
アルヴェルの販売では、誓約書はもちろんのこと、これまで通例化していた「予約販売」を原則行わなかった。
販売方法は、ある程度ディーラー側の判断に任せられたが、多くのお店では早い者勝ちとし(中には注文期間を区切って抽選としたところもある)、平日の昼間にもかかわらず、トヨタディーラーには商談の列が発生している。
しかし、こうした対策をとったアルファード・ヴェルファイアでも、高額の転売が数多く発生した。
一部のトヨタディーラーでは、販売する際に「この人は転売しないだろう」と確信を持って売った人たちに、転売されたという事実もあるようだ。
誓約書を取っても、販売時にお願いしても、ある程度の付き合いがあり転売は無いと見越していても、転売が繰り返され、転売による利益を得ている人がいる。もう、何かしらの強制力を働かせないと、この転売の動きには終わりはないのだろう。
トヨタもこれを認識したようで、ランクル70では販売の制限に大きく動き出すことになる。
■転売されたものは「買わない」こと! これが一番の転売対策
一部では物議を醸したランクル70の販売条件。ローン契約を半ば強制的に結び、車検証上の所有権を、一定期間ディーラーとするようにしたのだ。
中には販売方法をリース契約のみに絞り込むディーラーもあり、ユーザー側の購入自由度は極端に下がった。
こうした販売方法に対し、ディーラーには管理ユーザーの多くから厳しい声が寄せられた。ただ、こうした事態に、あるトヨタディーラーの上層部はこう語る。
「制限を設け、非常に不便をかけているのはこちらも承知の上です。しかしこれくらいやらないと転売されてしまう。まずは転売を止めないといけない。ディーラーとしても『売り方』をこんなに考えなければならない状況は好んでいません。みんなに楽しく売って、楽しく乗ってもらいたい、ただそれだけです。」
残念ながら、今すぐに転売ヤーを一掃するということはできない。ただ、この問題を解決に導く一つの方法として、私たち自動車ユーザーができることは「転売された商品を買わないこと」に尽きる。
転売その物を抑止することは、現状かなり難しいが、転売ヤーに利益を与えなければ転売は確実に減る。
少し高いけど、欲しいものだから買ってしまおうと思うのも、一つのユーザー心理だ。しかし、これをユーザー各々がグッと我慢することで、自動車販売は一歩ずつ正常な状態へ戻っていくだろう。
必要なところに必要なクルマがきちんと届き、快適に楽しく使ってもらうことを、作り手も売り手も願っている。
転売をするのはもちろん、転売商品を購入することで転売ヤーを裏側から支えてしまう行為も、やめるべきではないだろうか。
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