2022年に販売を終了したホンダ オデッセイ。その唯一無二性から、ユーザーのみならず、ホンダディーラーからも消滅を惜しむ声があった。しかし、消滅から二年と経たないうちに中国生産モデルとして再登場。復活は嬉しいけど、一体何があったのか? ホンダの知られざる思いに涙が止まらない。
※本稿は2024年3月のものです
文/鈴木直也、撮影/大西靖
初出:『ベストカー』2024年4月10日号
■迷走!? 消えたと思ったらまた登場
世界で約400万台という数字が、ホンダにとってジレンマなのだ。マツダやスバルみたいに100万台ちょっとのスケールなら、クルマ造り哲学は一本に絞るしかない。迷いがないからブランドとしての狙いが明確になる。
ところが、ホンダはまず北米市場、それに劣らぬ中国市場、そして日本を含むその他……。どこの仕向地も無視できないスケールで、これが日本市場戦略を難しくする。
もちろん、N-BOXに代表される軽自動車は日本市場向けの力作だから文句ないけど、それ以外がねぇ。ユーザーニーズより社内事情が透けて見えちゃう。
そういう意味でいろいろ葛藤があるのがオデッセイ。
デビュー2013年の古株ながら2020年に渾身のビッグマイチェンを実施。ハイブリッド主体で売っていこうという矢先の2022年になんと生産終了。それが1年とちょっとで中国生産モデルとして復活。まぁ、控えめに言っても迷走してる。クルマ自体は現在でもそこそこイケてるだけにモッタイナイ。
■装備もインテリアもより豪華に
パワートレーンは以前どおりのe:HEVながら、ホンダセンシングを最新バージョンにアップデートするとともに車載通信モジュール“ホンダコネクト”も搭載。最近は電子プラットフォームのほうが重要なのだ。
また、中国生産ということで豪華さに磨きがかかり、ドレープ入り本革張りの2列目シートはオットマンとリクライニング操作も電動だ。
低重心プラットフォームとしっかり目のサス設定で、背の高いミニバンと一線を画すハンドリングは健在。静かでトルキーなe:HEVは力強い。
ただし、日本の上級ミニバン市場には不動の絶対王者“アル/ヴェル”が存在する。どういったユーザーにオデッセイを売りたいのかというと、現実的には「アル/ヴェル以外のニッチ」しかないんだけど、ニッチならではの魅力をアピールするには、従来モデルの復活ではパンチが足りない……。うーん、詰んでる。
NSXやレジェンドなきいま、ホンダのラインナップで500万円を超えるのはこのオデッセイのみ。そんなフラッグシップモデルを海外からの輸入に頼るのは、たぶんホンダにとっても苦渋の選択なんだろうけど、そういう社内事情は日本のホンダファンにはあまり見せてほしくないものだ。
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