国内メーカーの海外工場で生産される海外販売車を国内販売ラインナップとして導入する事例が増えている。2024年3月に日本での販売を開始した11代目ホンダ アコードもそのうちの一台だ。海外生まれの新型アコードはどのような仕上がりになっているのだろうか?
※本稿は2024年4月のものです
文:片岡英明/写真:西尾タクト
初出:『ベストカー』2024年5月26日号
■11代目アコード日本版はタイ生まれ
情報が届いた時「アコード、お前もか!!」って思ったけれど、冷静に考えるとホンダらしいと感じたことも事実だ。これはシビックとともに長い歴史を持つアコードの話である。シビックともども世界戦略車に成長したから、ホンダはグローバルで生産の効率を高めることに力を入れた。
世界各国で販売されているアコードは、海外のホンダ工場で生産されている。ご存知の人も多いだろうが、先代の10代目モデルからアコードの日本仕様はタイのアユタヤ工場で生産され、日本に送り込まれているのだ。最新の11代目アコードも、タイ生産の帰国子女モデルなのである。
11代目アコードは、アメリカと中国、そしてタイで生産を行っており、日本よりひと足早く北米や中国で発売を開始した。3月から日本でも発売されたが、主戦場の北米と違って販売台数はそれなりだし、輸入車だから、最新のアコードもモノグレード構成としている。
ただし、ホンダアクセスがドレスアップパーツを用意し、2種類のスタイリングを提案した。
■かつての日本製よりも品質は向上
気になるのはタイ製アコードのクォリティだろう。上級クラスのセダンだけに品質や見栄えを気にする人が多いはずだ。エクステリアは4ドアクーペのように伸びやかなフォルムで、ボディパネルは凝った面構成ではない。しかし、前から後ろまで破綻がないし、チリ合わせなどもきちんとしている。
いろいろとアラ探ししたが、かつての日本製アコードよりエクステリアもインテリアも質感と見栄えはいいように感じた。ダッシュボードはソフトパッドで覆われ、樹脂部品の見栄えも手触り感も上々だ。グーグルのインフォテインメントシステムも北米仕様に先駆けて採用している。
フル液晶のメーターと12.3インチの大型ディスプレイは見やすいし、サイズを拡大したヘッドアップディスプレイも重宝した。なかでも便利だと感じたのが、エアコンの温度設定やオーディオ、照明などの車内機能を一括して行えるエクスペリエンスセレクションダイヤルだ。直感的に操作でき、使いやすい。
■内外装だけでなく走りも大きく進化
走りの実力も大きく進化している。スポーティな味わいだし、快適性も日本製のライバルを凌ぐほど高いレベルにあると感じた。プラットフォームは改良版だが、新しい車両統合制御技術などの採用により意のままの気持ちいいハンドリングを実現している。
心臓はシリーズ・パラレル切り替え式の「e:HEV」だけに絞り込んだ。だが、2Lの直列4気筒エンジンは先代のポート噴射からシビックなどと同じ直噴アトキンソンサイクルエンジンに変わり、2モーター内蔵の電気式CVTも同軸モーターから平行軸モーターへと変更している。
数値的には先代と大差ないが、パワーフィーリングは大幅によくなり、発進から加速までスムーズかつ軽やかだ。スポーツモードを選ぶと、応答レスポンスとダイレクト感はより鋭くなり、エンジン音も耳に心地よい響きに変わってくる。
が、新型アコードで驚かされたのは、ボディサイズを感じさせない軽やかな身のこなしだ。ステアリングの応答性はスポーツカー並みに正確で、ノーズが気持ちよく向きを変える。ボディやフロアなどの剛性も高い。スポーツモードだと乗り心地はちょっと引き締まった印象だが、これはアラ探しと言えるだろう。
20世紀の帰国子女モデルは、組み上げ精度や部品に問題点を抱えているクルマもあった。だが、今の帰国子女モデルは最先端技術と最先端設備の工場から生み出されている。他の工場との品質競争も熾烈だから、クォリティの面では日本製と遜色ないか、それ以上のレベルにあるのだ。
●新型アコード 主要諸元
・全長:4975mm
・全幅:1860mm
・全高:1450mm
・ホイールベース:2830mm
・車両重量:1580kg
・総排気量:1993cc
・エンジン:直4DOHC+モーター
・最高出力:147ps/6100rpm
・最大トルク:18.6kgm/4500rpm
・モーター:184ps/34.2kgm
・WLTCモード燃費:23.8km/L
・価格:544万9400円
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