「小さな高級車」として多くの人に愛された名車プログレ。レクサス顔負けの高級感が好きだったって人も多いのではないだろうか? 今回はそんなプログレのスポーティーバージョン「プログレ iRバージョン」をご紹介しよう。
文:小鮒孝一/写真:トヨタ
■デビューから1年後に追加された「iRバージョン」
高級車=大柄なボディという固定概念を打ち砕くべく、ほぼ5ナンバーサイズのボディにもかかわらず、クラウンを超え、セルシオにも匹敵するような高品質を携えて1998年に登場したトヨタ プログレ。
CMなどでは「小さな高級車」というキャッチコピーが与えられ、5層コートの贅沢な塗装や、吸音材や遮音材をふんだんに使用した静粛性の高いキャビンと本革もしくはジャガード織のたっぷりとしたシート。
そしてレーダークルーズコントロールや日本車初搭載となるカーテンエアバッグやナビデータと連動して適切なギアを選択するNAVI AI-SHIFTなどが用意されていた。
またエンジンも直列6気筒の2.5Lと3Lが用意され、インテリアには本木目の内装を持つ仕様も用意するなど、ボディサイズ以外はクラウンを超える装備を持ったモデルとなっていたのである。
■満を持して追加されたスポーティーバージョン
エクステリアデザインも落ち着いたものとなっており、やや保守的過ぎるきらいはあったものの、プログレのキャラクターにピッタリなものとも言え、未だに愛用し続ける固定ファンも存在するのも頷ける1台なのだが、そんなプログレにもスポーティバージョンが存在していたのだ。
プログレにスポーティバージョンが追加となったのは、デビュー1周年となる1999年5月のこと。
“Intelligent Rapidity(知的な速さ)”を意味する「iRバージョン」と名付けられたそのグレードは、より操縦性・走行安定性に重点を置き、コイルスプリング、ショックアブソーバーやパワーステアリングに専用チューニングを施した。
さらにフロントサスペンションにスタビリティブレースを新採用し、旋回性能や高速時の走行安定性などを高め、走る楽しさを進化させたもの。
またエクステリアではメッキ処理を施したアルミホイールのほか、フロントグリルやヘッドライト、テールライトなどをダークな色調に統一し、インテリアはスポーティと称されるブラック色のみとするなど、かなりの差別化がなされていた。
■良いクルマだったが需要が合わず廃止
ただ当時新車でプログレの購入を検討する層には、そこまで走行性能を重視するユーザーも多くなく、2001年には兄弟車種として躍動感と若々しさをアピールしたブレビスが登場したこともあって、iRバージョンは2004年春の改良のタイミングで廃止されることとなってしまった。
このように当時はなかなか評価されなかったプログレ iRバージョンではあるが、今考えてみると日常使いにもピッタリのボディサイズで落ち着いた雰囲気。
それでいてスポーティな走りも楽しめるという欲張りな欲求を全てカバーした1台とも言えるため、今後その価値が見直される日が来るのもそう遠くないかもしれない。
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