本誌『ベストカー』にて、インパクトの強い話題を取り上げる連載企画『文京区発 写真で見る衝撃の真実』。数ある企画の中から大橋ジャンクション(JCT)屋上の目黒天空庭園オープンの話題をプレイバック(本稿は「ベストカー」2013年5月10日号に掲載した記事の再録版となります)。
文:ベストカー編集部/写真提供:首都高速道路
■稲作の教育実習も!? 地域と一体になったジャンクション
東京目黒区。周囲の高層ビルに挟まれながらドーンと存在感のある建物が姿を現わす。実はこれ、首都高の3号渋谷線と中央環状線が接続する大橋ジャンクション(JCT)なのだ。
地上約30mを走る3号線と地下約40mの中央環状線をつなぐ高低差約70mのジャンクションで、楕円形の建物のなかに1周400mのループ状の連絡道路が設置されている。
意外ときついカーブを、上りは左回り、下りは右回りで2周する。世界でも珍しい構造だ。
開通直後、編集部Mは面白がってビュンビュン走り、周囲のひんしゅくを買ったものだが、運転に不慣れなドライバーは引いてしまいそうな道路といえる。
その大橋JCT屋上に先月末、目黒区が管理する「目黒天空庭園」がオープンした。
ループ状の道路の上だから、公園もループ状だし、勾配がついていて公園内にも高低差がある。
最も低いところで地上11m、最も高いところで35m、平均勾配は何と6%という。
高速道路で勾配6%といえば、けっこうきつい坂であることは、ベストカー読者なら理解していただけるだろう。公園としてはきつい坂がある、異色の存在なのだ。
大橋JCTプロジェクトは、隣接する高層ビルを含めた都市再開発事業の一環で、東京都、目黒区と首都高道路会社の3者で進めてきた。
構想段階から「緑の多い施設を」という地元の要望を受けた。そこで、別名「大橋“グリーン”ジャンクション」と銘打ち、地域と一体になって環境に取り組んだ。
「天空庭園」だけでなく、中世ヨーロッパの競技場(コロシアム)をイメージして造られたジャンクションの建物外壁には、ツタなど壁にからまる植物を植えてある。
何年か後には、周囲も緑に覆われた立派な建物になるはずだ。
楕円形の内側は、首都高の管理棟および排気孔のほか、フットサルコートなど目黒区が管理する施設が設置されている。しっかり有効活用されている。
そして、首都高の管理棟の屋上にも、庭園とは別に「里の杜」と名付けられたスペースがある。
ジャンクション近くには目黒川も流れており、元々自然が豊かな地域だった。
首都高が管理する「里の杜」は、昔の目黒川の風景を再現している。
水が豊かで、草花を植えるだけなく、田んぼも作った。ジャンクション近くの菅刈(すげかり)小学校5年生が、教育実習の一環として、田植えから稲刈り、脱穀、そして食べるまでを学習するのに、この田んぼが使われる。
まさに、地域と一体になったジャンクションだ。
大橋JCTができる前、この場所は東急バスの操車場だった。
さらにその昔は「玉電」の車庫だった場所。通常、高速道路で全方向に進めるジャンクションというと、広大な敷地を必要とするが、ここは東京の真ん中、そんなスペースは取れない。
旧バス操車場とその周囲という限られたスペースでコンパクト、かつ全方向に走行可能なジャンクションという苦肉の策が大橋JCTだが、道路も屋上庭園も東京の新名所という副産物を生んだといえるだろう。
天空庭園は入園無料、開園時間は午前7時から午後9時まで。
庭園内の最高地点には、「富士見台」と名付けられた展望台も設置されている。その名の通り、晴れていれば富士山を見ることができるという。
下のループ道路を走るのに飽きたら(飽きるほど走らない?)、たまには趣向を変えて、屋上の公園でのんびりしてみてはいかがでしょうか。
(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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