1994~1999年に販売していた初代オデッセイは、日本自動車史に残る評判と売れ行きを残した。デビュー直後こそ(新たなカテゴリーの挑戦者はたいがいそうだが)あまり売れ行きは伸びなかったが、翌年には人気が爆発。月販1万台以上売り上げ、1995年の車名別月間販売台数ランキングで登録車1位に輝いた(年販12万5590台)。
しかしそれから24年、今では月販1000台そこそこ、5代目となる現行型オデッセイはホンダの中でも影の薄いモデルとなってしまった。
なぜオデッセイはこんな状況になってしまったのか? 今後どうなるのか? 以下、新車ディーラーへの取材ならこの人、流通ジャーナリストの遠藤徹氏に伺った。
文:遠藤徹 写真:ホンダ
■現行型となって6年、影が薄くなって…
現行オデッセイの今年1~8月の登録台数は1万521台で前年同期に比べて7.9%減、月平均1315台と苦戦状態にある。ライバルにあたるアルファードの3分の1、ヴェルファイアの半分以下となっている。
何より、現行型が登場して(2013年11月)から約6年、初代が活躍していた90年代に比べると、すっかり存在感が薄くなってしまった。
ここまで凋落したのは現行型がデビュー6年経過と古くなっていることに加え、ミニバンのトレンドが乗用車的なハイトワゴンから背の高いボックス型にシフトしているためだ。トヨタはこうした流れにいち早く気づいたようで、エスティマの生産中止を決定した。
またオデッセイは独自の要因として商品戦略での失敗がある。
上級ミニバンのパイオニアとして初代オデッセイを成功させたが、その後、同クラスミニバンのトレンドは背が低めのハイトワゴンタイプと背の高いボックス型のふたつに分かれた。これに対応させてホンダは世代交代期に背の高いボックス型で両側スライドドアの「エリシオン」とヒンジ開閉ドアの「オデッセイ」の2系統のモデルラインアップに分けた。
ところがエリシオンの背の高さはやや中途半端であり、またホンダの顧客層に高級ミニバンのニーズが薄かったこともあり販売不振。オデッセイも背の低いスタイリッシュなデザインを採用したことがネックになり、こちらも売れ行きにブレーキがかかってしまった。ヒンジ開閉ドアのワゴンタイプから両側スライドドアの時代にマーケットニーズやトレンドが変化したことも背景にある。
そこでホンダは次の世代交代時にエリシオンとオデッセイを統合し、多少背の高い両側スライドドアの現行オデッセイを2013年10月に発売、2016年2月には2Lガソリンエンジン&2モーター方式のハイブリッドを追加して商品ラインアップを強化。登場当初はまずまずの売れ行きだったが、その後頭打ちになり、今日に至っている。
成功しているように見えるトヨタもミニバンニーズの変化に苦慮し、ヒンジ開閉ドアやハイトワゴンタイプのモデルを相次いで生産中止している。ニーズの中心は背の高い両側ドアのボックス型なのであり、低めのハイトワゴンタイプのオデッセイではないのである。
またオデッセイのパワーユニットは2Lハイブリットと2.4Lガソリンの2タイプ。これに対するトヨタのアルファード/ヴェルファイアは2.5&3.5Lガソリン、2.5Lハイブリッドであり、格上感がある。見た目の立派さ、ハイクオリティなつくり、室内の広さ、走行性あらゆる面でアルファード/ヴェルファイアに分がある。価格設定もアルファード/ヴェルファイアのほうが50~100万円も高いわけだが、もともと高級車の購入層に弱いホンダは、トヨタに太刀打ちできていない。
首都圏にあるホンダカーズ店の営業マンは、
「アルファード/ヴェルファイアはオデッセイに比べると見た目が立派だし、クオリティも高い。パワーユニットは同じハイブリッドでもエンジン排気量が大きいので格上感がある。販売店のマージン幅も50万円もの差があるから、競合したら勝てない。初代オデッセイを購入したオーナーの皆さんに、乗り換えに合わせて高級ミニバンを用意できればよかったんですが…ホンダに手頃なサイズアップの選択肢はなく、多くのお客さんはサイズダウンを選択して、ステップワゴンやフィットに買い替えてしまいました」
と白旗を上げている。
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